中編寄せ集め

□苺牛乳3
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夏休みも中盤に差し掛かった頃。ジャンプ片手に廊下を走っている私がそこにはいた。


「先生ージャンプ持ってきました」


国語準備室の扉を開けるとそこにはタバコ(本人はレロレロキャンディーと言っていた)を吸っている先生の姿がある。毎度交代で買ってくることになっているジャンプは今日は私の担当だった。


こんなことになったのもあの一件があったからだ。先生も随分もの好きだなと思う。私だったら私みたいな奴と一緒にジャンプなんて読みたくない。


「あっちょっ先生待ってくださいよ先に開かないで」

「早くしろよー」

「はいはい」


机の上に置いたジャンプの応募者全員サービスのコーナーを読んでいる先生に声を掛けて、冷蔵庫に買ってきた苺牛乳を入れる。開けた冷蔵庫は既に苺牛乳で溢れていた。


「またこんなに買ったんですか」

「お前だって、またそんな買ってきたのか」

「美味しいじゃないですか」


先生の隣に座ると先生がジャンプのページを捲り出す。表紙のカラーについてとか見出しについてなどを先に語ってから内容に入る。ついでに先週のあらすじの振り返りもする。


こうやってジャンプについて話せる人がいたことはとても嬉しかった。更に先生とは思考が似ているらしくて、同じところで盛り上がるし感動する。



「――そういえば、」

「なんだァ」



私の読み直しも一通り終わり、資料を打ち込んでいる先生に声を掛ける。先生の目線は相変わらずパソコンに向かっている。


「先生の名前って、なんていうんですか」

「そりゃァ、随分今更な話だな」

「すいません」


今まで気にしていなかったが、そういえば先生の名前もどこのクラスの担任かも何も知らなかった。


知っているのは苺牛乳が好きだと言うこととギン肉マンが好きということ。それと国語の先生ということ。


「銀八」

「あっいや、苗字で」

「お前ェ、どうせ苗字教えたらそれで呼ぶだろ」

「駄目なんですか」


よく分からないと言ったように先生に聞くと、打ち込んでいた手を止めてパソコンに向かっていた目がこちらを向いた。


「――駄目」


(なんで、)


そう言おうとしても口がパクパクとしか動かなかった。それを見て先生はまた口を開く。


「お前の名前は」

「米内です」

「下の方だよ」

「秘密です」


先生が名前しか教えてくれないのなら私も苗字しか教えない。形は違えどお互い様ではないか。秘密、と口に指を当てて言うと先生は薄く笑った。


「おー、いい性格」

「ありがとうございます」


そのままタバコを吸い始めたので匂いが移ってしまわないうちに国語準備室を出る。ちょっとドキドキするのはきっと今週のジャンプが過激な内容だったからだ。



意味深に笑った、



(三年の担任なんですか)
(いや、二年)
(二年何組の、)
(ズィー組)
(D?)(Z、)





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