雪月のバーバチカ
□お天道様と銀髪
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「・・・ぃ・・・、おい・・・おい!」
「・・・っ、ん・・・」
一体誰だろうか。私の安らかな眠りを邪魔する人は・・・こちらは毎日の徹夜で絶賛寝不足なんだぞ。
目をゆっくり開けると、そこは明るい世界となんかよくわからない男の人。
(誰だ・・・この人・・・)
銀髪でなんか可笑しい格好のお兄さんが私の顔を覗いていた。
「おー起きたか、アンタどうしちゃってくれるんですかァーお陰様で屋根からお天道様が拝めるようになっちゃったよ」
起き上がろうとすると全身が痛くて動こうにも動けない状態だった。私は諦めて視線を横に移して状況を確認する。
(・・・糖分?)
なんだかよくわからない額縁を視界に入れて、やっと状況に気がつく。
(・・・何処、ここ・・・)
「おーい」
銀髪の人が私を揺する。その度に全身に痛みを感じた。
「――っ、」
「ちょっと銀さん乱暴にしないでくださいよ!彼女怪我してるんですよ!」
「ありゃ?そーなの、悪ィ悪ィ」
眼鏡の男の子が止めてくれなかったら痛みで転げまわっていたかもしれない。心の中で感謝した。
「銀ちゃーん!女の子起きたアルかー!私もお話したいネ!」
「あーハイハイちょっと待ってなさいね、銀さん今事情聴取中なの」
なにやら女の子の声も聞こえてくる、銀髪の人越しに見えた天井には大きな穴が空いていて。
多分、あれは私がやったのだろうなと思った。
「ってことでェーなんでいきなり落ちてきたんですかァ」
包帯と湿布塗れになった私の前には銀髪のだるそうな人と眼鏡の男の子とチャイナ服の女の子が座っている。
3人の共通点は、明らかに服というか、時代背景が可笑しいということ。
「・・・どうしてですかね?」
「それ聞きたいのこっちだからァ!銀さんまたあんのババァに怒られちゃうよ!」
「あっあの、修理代はこちらで負担いたしますのでどうかお許しを・・・」
ちょっとガラが悪くてこわいお兄さんだからもうお金だけ置いて逃げた方がいいかもしれない。そう思って私はポケットからお財布を出す、が・・・
「えっと、それじゃあこれくらいで・・・」
「ん?それどこのお金アルか?」
「え?」
「僕も初めてみますね・・・あと気になってたんですけどその服も・・・」
(お札使えないって・・・)
銀髪の怖いお兄さんは私が渡したお札をまじまじと見ている。
「・・・どういうこと、」
私は小さく呟いた。変な汗が体から吹き出る。行き場の無い手は無意識のうちの膝の上で強く握りしめていた。
「お嬢さん、何処の人?」
顔が青くなっている私に、そう声をかける銀髪のお兄さんはさっきまでのだるそうな雰囲気とは変わって、急に真面目な表情になってた。
「に、日本ですが・・・」
「此処、どこだかわかるか?」
「日本語通じるんで日本・・・じゃないんですか・・・?でもお金・・・」
眼鏡の男の子の一言で、私は一気に現実を見ることになる。
「――此処は、江戸ですよ」
「・・・は、江戸・・・?」
体中に感じる痛みを噛み締める。
(――これは、夢ではないようだ。)