雪月のバーバチカ

□探し物と落とし物
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爆発は意外と大きかったようで辺りはもう人はいなくなっていた。私は菓子折りの袋を下げてこの場に不釣合いな格好をしていた。


「どこか通れるところないかな…」


辺りを見渡すと瓦礫などがあって通行するのは難しいように見えた。朝に銀時さんに今日行くと連絡したので今頃心配しているかもしれない。


大きく燃えている籠屋を目の前にして、私は困り果てた。



「何してんだ、女」

「え、」


後ろから声がして振り向くと、笠を被った派手な着物を来た男の人が立っていた。


「ここ、通りたかったんですけど…難しいですよね」


誰だろうと思ったがとりあえずはどうにかして通るのが優先かと思ってうつむきながら男の人に問う。結果なんてわかっているけど。


「――退け、」


私を通り過ぎて瓦礫の山に向かう男の人を目で追う。あそこから行くと言うのだろうか。


黙って見ていると男の人は刀を取り出して行く手を阻んでいた大きなコンクリートの塊の前でひと振りした。するとコンクリートは大きな音を立てて崩れていく。


「――う、わ」

「女、自惚れんじゃねェ。用事がこっちにあっただけだ」

「あ、はい」


男の人もこちらに用事があったようだ。と言っても一応お礼は言ったほうがいいのだろうか。私が口を開こうとしたとき上から声がした。


「椿!!」


その声の主を探すと瓦礫の山の上に銀髪を見つけた。あんな大きな山を登るのは大変だっただろうに。心配を掛けてしまっていたようだ。


「――銀時さん、」

「っ、今行く!」


火の海だと言うのに申し訳ない。銀時さんが来てくれて安心している私がいた。銀時さんはどうしてか、頼りにしてしまう。






女の名前を呼ぶ声がして行こうとしていた足を止めて振り向く。そこには見知った顔があった。俺が用があった人物――坂田銀時。


こちらには気づいていないようで、女に駆け寄る。刀を鞘に収めてその様子を見る。改めて顔を見ると女は見たことない顔だった。


「銀時!客人を置いていくとは酷いぞ」


後に続いて俺と同じように指名手配中の桂の姿が見えた。この爆発はコイツの仕業かと思っていたが様子からしてどうも違うらしい。


「――高杉か、」


そいつは俺に気づいたようでこちらを睨みつける。それを見て俺は口元を緩める。


「ヅラァ、久しぶりだな」

「ヅラじゃない桂だ。主、この街に何用だ」


刀に手が触れている警戒心丸出しの桂を横目に、こちらを認識した銀時を視界に入れる。


「高杉、」

「俺ァ今日はテメーに用があってなァ」

「…」


そうだ、コイツに聞きたいことがあって今日は江戸に降りた。俺が今探している少女、今はそれほどの女になってると思うが。


一緒に居たコイツ等なら知ってると思って来てみたら、桂も一緒に居て手間が省けた。



「――聞きてェことがある」

「なんだ、」


銀時は先ほどの女を自分の後ろにやって俺を睨む。それを見て乾いた笑いが口から漏れた。



「女を探してる」

「女…?」

「あァ、テメー等も知ってる顔だ」

「ハッ…知らねェな」


そう言って頭を掻く銀時の後ろに居た女が少し控えめに顔を出す。



「――高杉?」

「…古い仲だ」



小さく銀時に聞くとそう言われて納得した様子だった。この俺を知らないとはこの女とんだ世間知らずのようだ。


(――にしてもこの女…)



「…女、名前は」


そう聞くと少し戸惑ったようにする女を隠すように銀時が前に立つ。


「オイオイ、コイツに手ェ出すのは止めて欲しいぜ」

「テメーにゃ聞いてねェ」

「おー怖い」


初めて女に気づいたように桂がそいつのところへ寄る。女も特に警戒した様子はなかった。





おもちゃを見つけた子供のように


(テメーに興味が沸いた)







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