君の手を引いて走れ!

□友情編
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体育の時間に私はいつものように100mを綺麗に走り切ろうとした。ゴーグルメガネくんも見てるし頑張らないと、と思っていつもよりやる気を出したのが間違いだったのかそうではないのか。


なかなかいいタイムで走り切ることができそうだと思って余裕になっていたら誰が想像しただろうか。何やら石に足が引っかかって顔面からスライディングをしてしまった。


一応顔面は何故か無傷だったので良かったが(女の子は顔を大切にしないとね)半袖ハーフパンツで体育を受けたせいか、膝や腕が血まみれだった。


格好が悪いと思ってその場にうずくまっていると、近くで男子がハードルをしていたようでゴーグルメガネくんが話しかけてくれた。


「――おい、大丈夫か」

「あ、あい…」

「酷い転け方をしたな」


私の腕を掴むと軽々と起き上がらせてくれて、何故かそのまま保健室にまで連れて行ってくれた。まぁこれが私が傷だらけで鼻水やら涙やらで顔が汚くなってなければ最高だったのだが。


ジンジンと痛い膝が視界に入る。――残念ながらこれは夢ではないようだ。



04

いやなにこれ恥ずかしい。調子乗った私が悪かったです神様。どうか十分前に時間を戻してください。


そう心の中で神に拝んでいると消毒液を含んだガーゼが私の傷口に接近してきた。逃げようとするとゴーグルメガネくんに肩を掴まれて動けなくなってしまった。


「いやちょっとすいません勘弁してッあああああ痛い痛い!」

「こら、みょうじさん落ち着いて」

「先生の冷徹!非道!」


いやいやと半べそで逃げようと試みるも思った以上に私の肩を掴む腕の力は強かった。どこにそんな力を秘めていたんですか。そのアメリカンな髪型にですか…。


一通り消毒が終わったようで私は長椅子に倒れこむ。保健室の先生はそれを見て「早く戻りなさいね」とだけ行って保健室を後にした。


「――お前、足速いな」

「え?あっいや負けますよ」


私の返答に主語が無かったので首を傾げるゴーグルメガネくん。だってあなたの名前私知らないんですもん。


「陸上部だと聞いた」

「あっそうです、風丸くんがサッカー部でお世話になってるようで」

「ああ、そうか。アイツも陸上部だったな」


何処か違う方向を向いているゴーグルメガネくんは明後日の方向を向いているのかな。明後日はこっちだよ。(これも多分間違ってる)


「サッカー部に入ってもっと速くなったなぁって、風丸くん」

「そうなのか」

「特訓の成果じゃないかなと、私ももっと速くなりたいのにずるいなー」


少しほっぺたを膨らませるようにすればゴーグルメガネくんに鼻で笑われた。私もお返しに笑ってやろうとしたら鼻水がまだ残っていたようでちょっと出そうになった。


鼻をかんでいるとゴーグルメガネくんは「先に戻る」とだけ行って保健室を去ってしまった。一人だけになった保健室は、少し静かすぎて私には寂しかった。

















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