君の手を引いて走れ!

□部活編
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ジリジリと壁に追い詰められる私。一歩々々下がっていくとついに背中が冷たいコンクリートに当たった。


ついにここまで来てしまった、どうしようか、土下座でもして見逃して貰おうか。そんなことを考える時点で無駄だったよだ。彼にはそんなことは通じないのだから。


ここまでか。そう思って私は嫌々ながら彼に向かって両手を大きく上げた。



07

「すいません!降参!円堂くん私は降参します!」

「はい、タッチ!なまえが鬼な!」

「そんなぁ…」


只今サッカー部と陸上部で校舎内を鬼ごっこ中です。何故こんなことになったのかは外の天気を見てくれれば分かると思います。生憎の空模様、今日は見ての通りじめじめとした雨の日です。折角短距離リレーをする予定だったのにと残念に少し曇っている窓ガラスから空を見る。


「次10秒数えてからスタートな!」

「はーい」


そう言って元気に廊下を走り出す円堂くんもきっと今日は特訓をやる気満々だったのだろう。こんな校舎内を走り回るようなものじゃなくて、こう、もっと体力も筋力も付くような。


「いーち、にー、さーん」


そうやって廊下の隅で数を数えていると逃げていたであろう同じ陸上部の宮坂くんとばったり会った。彼は私が数えているのを見て笑って廊下を別の方向に去っていった。しかも今の笑顔は風丸くんのように爽やかでも円堂くんのように暑苦しくもない。にやにやと鼻で笑うような感じだった。


円堂くんから貰った鬼の証であるタスキを肩に掛ける。これを掛けるのももう何回目だろうか。廊下をトボトボと歩いていると後ろから声を掛けられた。


「…ふ、またお前が鬼か」


そうそう、こんな鼻で笑う風に宮坂くんは…。声のする方を振り返るとそこにはサッカー部のユニフォームに身を包んだゴーグルメガネくん(しかもverマント)が立っていた。


「ゴ、ゴー…っ!」

「ご?」

「GO!!!」


余裕な顔をして近づいてきたものだから彼はきっと油断しているのだろう。こちらも声を掛けようと思ったが最初に出てきた言葉はゴーグルメガネくんだったので頑張ってそれは喉の奥に収める。


頭にクエスチョンマークを浮かべるような仕草をしたゴーグルメガネくんを不意打ちで疾風ダッシュで追いかける。だがしかし、途中の階段を軽やかに飛び越える彼には着いていくことは出来なかった。上がりだった階段で足がもつれて転げ落ちてしまったのは言うまでもない。


「…何をやっているんだ」


上の方からゴーグルメガネくんの呆れたような声が聞こえる。これは恥ずかしい。


その後円堂くんにかなり笑われて天然のイジリにあった後(許さぬ)、少し足を抉いてしまった私は風丸くんの肩を借りて(シャンプーのいい匂いがした)保健室送りになってしまった。


ちゃんと爆笑していた宮坂くんは視界に入れておきました。



















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