君の手を引いて走れ!

□部活編
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それから3日位は陸上部の練習もお休みして放課後はサッカー部を盗み見て帰った。別に次の日から練習に参加しても構わなかったのだが流石にそれは宮坂くんにも怒られてしまった。意外と優しい。


この前の練習は意味があったのかと円堂くんに聞けば「足腰と持久力の強化だ!」と当たり前のように返されて何も言えなくなってしまった。サッカー部はホント練習が好きなようであのゴーグルメガネくんも楽しそうに鬼ごっこをしていたのは意外だった。


それに、風丸くんと久しぶりに一緒に部活をしたせいか、風丸くん信者の宮坂くんもいつもより機嫌が良かったので私が足を抉く以外はいい時間を過ごせたと思う。



08

そろそろ部活にも参加してもいいんじゃないかと朝に同じバスで通学している宮坂くんをチラチラと見るととても渋い顔を返された。豪炎寺くんの真似だろうか。ちょっと似ていると思う。


今日は部活に出てやるぞという勢いでそのまま体育のドッヂボールは見学して(面倒だから)隣のサッカーをやっている男子の授業をぼーっと見る。


あのサッカー部が一般生徒を相手にサッカーをするなんてちょっとセコイのではないだろうか。と、思ったら意外にも必殺技は出てこなく、皆仲良くサッカーをしているようでちょっと微笑ましい。


次はリフティングの練習になったようで男子は各自バラバラとボールを取り出して練習し始めた。ちょっと女子の方によそ見をしているとサッカーボールがこちらの木陰の方まで飛んできた。そのまま木を抜けてしまったボールを重たい腰を上げて拾いに行く。


「あ、あった」


木の間に隠れるようにしてあったボールを拾い上げる。久々にその感触を確かめる。サッカーボールは久しく触っていなかった。


ちょっとした好奇心が生まれた私はその場で男子がやっていたリフティングを真似する。ボールも拾いに来ないことだし、ちょっとだけいいだろう。


感覚は鈍ってはいないようだった。ちょっとボールで遊んだ後助っ人としてサッカーをやっていた時のなんちゃってシュートを思い出す。ここから男子がやっているグランドまで遠いことだし、打っても怪我人は出ないだろう。多分。


大きく蹴り上げるとその場の風を全てボールが纏って私のもとにゆっくりと降りてくる。地面を踏んで少しジャンプして適当にボールを蹴ろうとする。その場の気分で出来上がるシュートだ。


「スペシャルシュート!なんちゃって」


これでこのままこのボールがグランドまで届けばいいのだが。そう思ってボールに足が触れる瞬間、視界にあのゴーグルが入った。


「え、」


変に力が入ってしまったまま蹴ったボールはゴーグルメガネくんのすぐ横の木にぶつかって木が大きく揺れた。どう言い訳をしようかコンマ1秒の瞬間で考える。――何も浮かばなかったのは今まで私がどんなひねくれ方をしても、結果馬鹿正直に生きてきた所為だろう。


「みょうじ、今のシュートは…」


私はさぞ青い顔をしているのだろう。ゴーグルメガネくんの表情はそのゴーグルで閉ざされていて読み取ることは出来ないが、レンズ越しに映った私の表情はいやでも分かった。


















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