君の手を引いて走れ!

□サッカー編
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「なまえちゃんがね、助けてくれたの」


秋がベンチに座りながらドーピングの状況説明をした後、「どうやって逃げてこられたか」の質問をされた時に、周りの部員にそう言うと近くでドリンクを飲んでいた鬼道はボトルを落としそうになった。


「来てくれてるのか!なまえ!」


怪我の手当をしてもらいながら秋の方を元気に向いた円堂が声を上げると、秋は優しく微笑んだ。春奈はその時のなまえの様子を熱弁している様子だった。サッカーボールがなんとか、警備員がなんとか、必殺技がなんとかと話しているのが耳に入るが、鬼道は彼女がいるであろう観客席の方を向いていた。


「…迷子にならずにスタンドまで着けてるといいんだけど…」


心配そうに呟いた秋の言葉に皆苦笑いをしている。少し場が和んだところでベンチから立ち上がって後半戦の準備を始めた。



17

「やっと着いた…」


無駄に長い階段を上りきって私の足はもうパンパンだった。多分こんな階段選手でも上ることはないのだと思う。途中で後半戦開始と思われる笛の音がしたときはもう帰ってやろうかと思った。


今点差はどれくらいだと掲示板を見ると3-0だった。悔しいが席を探してる暇もないと思いその場に立って観戦をする。何故か皆ボロボロになっていた。


途中で外してしまったメガネを再びかけ直す。なんか神みたいな人が必殺技でシュートをしようとすると円堂くんが『マジン・ザ・ハンド』という(聞き間違いでなければ)必殺技でシュートを止めた。


円堂くんはいつの間にあんなに強くなったんだろう。神が唖然してる間に青いマントの選手にボールが渡った。


「えっゴーグルメガネくん!マントverのメガネくん!」


相手の技で宙を舞ったゴーグルマントくんはヘディングで豪炎寺くんにボールを渡した。これで終わりかと思ったら豪炎寺くんの『ファイヤートルネード』(!)とゴーグルマントくんのツイン…ツイン…なんとか。ゴーグルマントくんごめん。


2人の必殺技で相手チームのビックウェーブ(見た感じ)を破った。豪炎寺くんのファイヤートルネードが見れて興奮していた私はうっかりゴーグルメガネくんの必殺技を見逃した。


そして再び神が円堂くんにシュートを打って円堂くんが魔人を出して止める→豪炎寺くんのファイヤートルネードとゴーグルメガネくんのツインブースト(今度はちゃんと聞きました)で一点差まで追いついた。


ここから試合を観たからイマイチ急展開についていけないけど皆が喜んでいるのでこれはこれでいいのではないだろうか。


ふむふむと思っているとまた豪炎寺くんのファ…まぁさっきみたいに点を取って同点になっていた。「残り時間はあまりない」という放送席での実況でふと掲示板を見る。延長は厳しいだろうが後1分もなかった。


急に円堂くんがゴールを放ったらかして駆け出すと細長い子とナウい子と一緒に何やら火の鳥を出した。豪炎寺くんのファイヤートルネードと一緒にゴールネットを揺らしたそれは雷門の逆転点となってそこで試合は終了した。


お通夜だったフィールドは急に盛り上がって皆雷門の勝利を祝福していた。勝利を実感していないように唖然としている選手は次の瞬間、緊張の糸が途切れたように喜びだした。


私も後ろの方で小さくガッツポーズをしてとりあえず込まないうちにと思って紙吹雪だらけのスタンドを後にする。最後にトロフィーを持って写真撮影をしている笑顔の雷門イレブンを見て、今度はちゃんとエレベーターで下りた。自分の左胸を触るとまだドキドキしていた。



















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