サッカーボールを持った宇宙人たちが、元祖イナズマイレブンの前に立った。そのサッカーボールは黒く、自分たちの普段見ている物と同じ物とは思えないくらい不気味だった。
「――本当に、破壊なんてするつもりか」
まだ信じきれていない元祖イナズマイレブンは再度確認するように聞くと、それを聞いた真ん中に立っているレーゼと名乗る少年が当たり前にように笑った。
「なら、証明してみせよう」
そう言ってレーゼは足元にあったサッカーボールを、雷門中前のバス停に止まったバス目掛けて蹴った。バスからは丁度サッカーボールを抱えた少女が降りてくるところだった。――まさか、少女がこちらを向いた瞬間、誰かが叫んだ。
「危ない!!!」
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そういえば弟がバス停の近くまで迎えに来てくれると行っていたような。バスに乗りながらぼーっと考えていると危なく停車ボタンを押し忘れるところだった。
稲妻のシンボルを確認してサッカーボールを抱え直し、ステップに少し足を引っ掛けて転びそうになりながら降りる。明日から皆は全校のスターだな。そんなことを考えて嬉しくなった。
ふと、風が変わった。顔を上げると目の前に広がる黒い風のような物を纏ったサッカーボールが自分に迫ってきているではないか。誰かが「危ない!!!」と叫んだことで動けないでいた体が解放された。
ボールはこちらに向かっている。この勢いだと止めることは難しいだろう。私は軌道を逸らそうと思って地面を大きく蹴り上げた。勢いのあるボールに等しい力のシュート技は、昔の友人に教えてもらった技しか無かった。
「――流星、ブレード!」
彼の打っていた物とは異なるのは風の力を応用しているところだ。向かってくるサッカーボールと逆回転の風を纏うそのボールは、勢いを無効化にすることが出来た。
なんとか弾くことが出来てほっと安心する。まさか雷門でサッカーをやる人がサッカー部以外にいるなんて、やはりフットボールフロンティア優勝の影響が大きいのではないだろうか。真っ黒で異質なサッカーボールをグランドに戻して私は向かってくる弟に大きく手を振ってその場を離れた。
元祖イナズマイレブン誰かが、小さく「――あの少女は、」と呟いた。
小さな弟が私に駆け寄った。その後ろを見慣れた兄弟も追いかけてきた。3人して少し衣類が汚れているところを見ると、またサッカーをしてきたのだろう。
「姉ちゃん!」
「あら、優一と京介も」
「なまえ姉!」
3人まとめてハグしてやるときゃっきゃと喜んでいる兄弟とは逆に、弟はとても嫌そうな顔をした。畜生と思って弟に貰ってきたパンフレットを渡すとかなり嬉しそうにした。
「さぁ、帰ろう」
サッカーボールを抱えた弟たちの小さな背中を押してどんよりと変わった空を眺めた。さっきとは裏腹な空に、私は少し嫌な予感がした。サッカー部が破壊された後の雷門に着いたのは、それから20分もしない内だった。
――――
今後の展開のため
原作クラッシャー