君の手を引いて走れ!

□突撃編
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朝だろうか、キャラバンも停車しているので目的地に着いたのか。少しだけゴーグルそずらして目を擦ると隣に座っている筈の少女が少し近いような気がした。


なんだと思って確認するように顔を向けると、視界に飛び込んできたものは明らかに自分が思っていた人物とは違う。あまりの出来事に驚いて声が出そうになるが、そこは自分の口を手で塞いで我慢する。まだすやすやと眠っているのは思ってもいなかった人物だった。



36

皆バラバラと起きだした。俺の隣に寝ている奴に気が付いた春奈が「きゃー!」なんて盛り上がっているが写真を撮るのはやめてほしいと思う。春奈はこいつをかなり気に入っているようで、「寝顔可愛い!」なんて言っているが、俺にしてみれば別に寝てようが起きてようが…。


風丸や一ノ瀬も面白そうにこちらを覗いているがあまりいい気分ではない。多分本人の荷物だと思われる荷物を抱えて丸くなって寝ているみょうじを試しに揺すってみるが中々起きる気配はなかった。


「まだなまえ寝てんのか!」

「やっと来たか…」


どうしようかと思っていると、寝る前に隣の座席で見た財前塔子が立っていた。円堂の「よーし!出発だー!」という言葉も聞こえてはいないようで爆睡だ。


「なまえの腕から抜け出すの苦労したんだよなー!」と言って手を荷物から解いて普通に間に座らせて自分も席に着く。このままなのか。


バスの振動でこてんと肩に重みが掛かった。なんだろうと自分の肩の上にあるものを確認すると、黒髪。一瞬香ったシャンプーの香りに気付かれないように動揺すれば次のカーブで重みは無くなり、隣の方に頭を傾けていた。


たまにやってくる重みに動揺しながらバスは進む。北海道に着く頃にはよくわからないがヘトヘトになっていた。











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