君の手を引いて走れ!

□突撃編
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「この程度かよ、甘っちょろい奴等だ」


吹雪士郎くんの声がグランドに響く。さっきとは打って変わって声も少し低くなり、目もギラギラと獲物を狙うような攻撃的な雰囲気になった。


風のようにフィールドを駆ける吹雪士郎くんは、ボールが凍る必殺技で円堂くんのゴッドハンドを砕いて。華麗に点を決めてしまった。


その光景に思わず私はベンチから立ち上がる。急に立ったので隣に座っていた秋ちゃん達ががなんだなんだとこちらを向くが今の私にはそんな視線は気にならなかった。


「私の天使が!」



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染岡くんとボールを取り合った吹雪士郎くんはあの可愛い儚げな印象とはあまりにもかけ離れていた。と言うか、試合の最初辺りはそのままだったんだろうけど、ボールを奪ってから急にあんな風になってしまった。


ハンドルを握ると性格が変わるとかそういう部類なのだろうか。ベンチで絶句していると監督に肩を叩かれてとりあえず一度その場に座る。


「吹雪君、正式にイナズマキャラバンへの参加を要請するわ。いっしょに戦ってくれるわね?」

「はい、いいですよ」


ニッコリと笑う吹雪士郎くんはさっきまでのワイルドな吹雪士郎くんとは別人のようだった。つまり、最初の頃と同じように笑っていたのだ。私の気のせいだったかなと頭を掻いて秋ちゃん達に「いきなり立ってごめん」と謝った。


吹雪士郎くんが正式にイナズマキャラバンに参加することになってその場は収まった。紺子ちゃんが私の手を引いて「なまえさんともサッカーしたかったな」なんて言ってくれたので私のテンションは上がりっぱなしだった。塔子ちゃんやさっきのロシアみたいな子(真都路珠香ちゃんと言うらしい)を含めた女子組でサッカーをすることを約束した。


再び室内に通されてお餅をご馳走になる。流石北海道、真都路さんも紺子ちゃんも2人とも白くて可愛いくてお餅みたいだなと思って見ていると、音無さんがパソコンを操作していた手を止めて皆を集めた。


緊張した空気のシンとした教室に、何処かで聞いたことのある声が響く。此処からじゃ画面がよく見えないなと思いながらお餅を口に含んだ。弾力が凄くて噛みにくい。


「白恋中の者たちよ、お前達は我がエイリア学園に選ばれた。サッカーに応じよ。断ることは出来ない。負ければ破壊が待っている。助かる道は勝利のみ」


この声は、あの緑の宇宙人ではないか。小さく円堂くんが「レーゼ…」と言うのが聞こえてこの緑の人はレーゼと言う名前なのかとそこで気付いた。


「ふぃどおくん、みふぉりのふぃとってレーヘっていふの?」(鬼道くん、緑の人ってレーゼって言うの?)

「頼むから飲み込んでから喋ってくれ」

「ふい」


ふはふにいたふぃどおくんにはなふかけれは、あふれたよおなこへがきふぉ「頼むから飲み込んでくれ」…もぐもぐ。


近くにいた鬼道くんに話しかければ、呆れたような声が聞こえてきた。サッカー部はジェミニストームとの戦いに挑むべく暫く白恋中に滞在することになった。こんな急に大丈夫だろうかと不安になるが、チームに開いた穴を塞ぐのはエースストライカーの存在が大きいと思うので、今回はなんとか皆で力を合わせて頑張りたいと思う。もちろん私を含めての話だ。










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