君の手を引いて走れ!

□突撃編
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遅れて騒ぎに顔を出すと何故か皆サッカーをやっていた。どういうことだと瞳子監督に目をやると「準備運動にはいいでしょう、それに…」と言った。何か続けて言いそうだったのだがそれは気にしないようにして皆の試合をマネージャー軍に混ざって観戦する。


黒いサッカーボールを抱えてどうしてこうなったかの話を秋ちゃん達から聞いていると、円堂くんが黒いサッカーボールを拾って、それで疑われたと言った。私その場所にいなくて良かったなと切実に思った。



30

「そういえば、雷門10人しかいないよね」

「そうねぇ…」


駆け回る「塔子様」を確認して雷門の人数を数えてみた。少ないなあと思って声に出してみると、隣に座っていた雷門さんが反応してくれた。しばらくして、後ろから声が掛かった。


「――みょうじさんは準備をしておいて」

「あ、はい」


そろそろ前半戦も終わるなと思って、黒いサッカーボールを抱えて少し動く。試合なんて久しぶりに出るから私やっていけるかな、と心配になった。そこは皆の指示に従えばいいかな。


前半戦を終えた皆にマネージャーと一緒にタオルを配ると、瞳子監督の口から思ってもいなかったことが出た。染岡くん風丸くん壁山くんをベンチに下げると言う言葉に耳を疑った。


「――それと、後半からはみょうじさんを出します。以上」


不満が残る空気になってしまってなんだか私も出にくい所はあるが、きっとこの監督の事だから何か考えることがあるのだろうと思う。そろそろ後半戦が始まる頃で、私はフィールドに向かって歩き出した。


「みょうじ、ポジションは」

「鬼道くん!えっと…一応MFです」


控えめにそう言うと、その後ろにいた円堂くんが「風丸と似てる感じだ!」と鬼道くんに教えてくれた。そうすると鬼道くんはふむ、と何か考えている。ゲームメイクでもしているんだろうなと思った。


「私久しぶりに試合するから、皆色々教えてね」


そうやって声を掛けると辺りからは「任せろ!」と言う声が掛かって私はついついほころんでしまう。こういうのが久々なのでとりあえず屈伸でもしておこう。なにやってんだという目で横にいる鬼道くんに見られたが私はそんなことではめげない。


後半戦のスタートの笛と共に私は大きく大地を踏みしめた。少しだけ私の何かが始まったような気がした。風を纏うこのボールは誰にも渡さない。











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