――まぁ前回で「このボールは誰にも渡さない」とかかっこいい事言いましたが、久しぶりの試合は何をいしたらいいか分からなくて、結局あまり訳に立つことはできなかったと思う。
一応雷門の勝利という事になって円堂くんに「やったな!」なんて声を掛てもらったが、肝心の私は苦笑いだった。
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「お前結構やるなあ!」
「と、塔子様…!」
しょげてた私に声を掛けてくれたのは「塔子様」だった。そう私が言うと「塔子でいいって!」と言ってくれたので塔子ちゃんと呼ぶことにしようと思う。「みょうじなまえです」と自己紹介をすると向こうは元気に呼び捨てにしてくれたのでちょっと嬉しかったり。
「全然駄目だった…」
「いやかなり動けてたと思うけど…まぁなまえが駄目って言うならもっと練習しないとね!」
「そうだよ!練習しないと!」
黒いサッカーボールを抱えて立ち上がると「まぁまぁ」と近くに居た風丸くんに宥められた。風丸くんの足元にも及ばない疾風ダッシュですいません。
そんなかっこいい風丸くん!あなたのハートに疾風ダッシュ!なんてギャグを思いついたのだが、ただめっちゃダッシュしてハートを通り過ぎるだけで終わるなと思ったので言うのはやめておこう。(あなたのハートにゴッドハンドとかどうだろう)
鬼道くんならあなたのハートにイリュージョン、ハッ!なんて。多分考えてたことが読まれたか私がニヤニヤして鬼道くんを見てたのに気付いたかどっちかで、どこからか鬼道くんの蹴ったボールが飛んできた。
そんな穏やかな空気は、テレビを通じて宣戦布告をするジェ…ジェム…ジェミニストーム(言いにくい)の映像が流れたことによって空気が変わった。急いでテレビ局へ向かうと緑色の凄い髪型の人が居た。
彼は私を見て一瞬目を大きく開いたがまたすぐに元に戻ってしまった。あれ、私達初対面だよね。一応顔に何も付いていないか確認していると、試合を要求した円堂くんはその緑の人に却下されてしまった。
「言ったはずだ、我々はサッカーという1つの秩序のもとで勝負をすると。10人しかいないお前たちに我々と戦う資格などない」
そう言い張った緑の人に唖然とする。いや此処におりますがな。完全に私を見ながら言ってるのでマネージャーとして認識されてるのだろうか。私も選手ですと宣言しようと思って「わ…」と口を開くが、それは塔子ちゃんの「11人目ならここに居るよ!」という言葉に遮られてしまった。
心無しかその状況を見ていた鬼道くんと風丸くんが笑っているように見えるがきっと気のせいだろう。君たちのスマイルはこんなところで使っていいものじゃないよ。
「パパは取り戻す。あんたたちを倒してね!」
雷門のユニフォームを着ている塔子ちゃんを見て上のジャージを脱ごうとした手を止める。これはもう私の出番は無いようだ。瞳子監督は多分塔子ちゃんの、この雷門サッカー部での実力を見たいと思っているので私はもう何も言いませんよ。