君の手を引いて走れ!

□突撃編
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皆を試合に送り出すと、いつもはハイタッチでもしてくれる豪炎寺くんの元気がなかった。いやハイタッチはしてもらったことはないのだが、ちょっと顔色が良くないというか。


そして試合を影から見ている不審者を見つけてしまって、これは監督に報告するべきかと凄く迷った。




32

とりあえず試合を見て支障があるようだったら報告しようと思ってその場に留まる。パスがどんどん繋がっていく中、塔子ちゃんが豪炎寺くんにパスを出した。すると豪炎寺くんはミスをしてしまって相手の宇宙人…ジェ…ジェミニ…ジェミニストーム(言いにくい)にボールを奪われてしまった。


そのまま円堂くんごとボールがゴールに入った。マネージャー軍が唖然としている中私は豪炎寺くんの方を見る。すると彼は不審者3人に目を向けていた。これは、と思って瞳子監督にしか聞こえない声で話す。


「あそこの不審者3人は…」

「彼、あの3人を気にしているようね」


瞳子監督は気が付いていたんだなと思い、後は瞳子監督に任せてその後の展開を見守ることにした。豪炎寺くんはあの不審者達に弱みでも握られているのだろうか。そわそわとベンチで見ていると豪炎寺くんがファイヤートルネードを外してしまった。


その後の風丸くんと豪炎寺くんの必殺技も大きくゴールを逸れた。変に力を入れているか、それとも抜いているか。風丸くんの怪我の影響だけではないその外れ方に私は確信をしてしまった。


「これは…もう…」


ちらっと監督に目をやると「確実ね」と声が返ってきた。豪炎寺くんはシュートをわざと外している。前半は13-0で完敗した。戻ってくる選手にアイシングをしてあげていると、瞳子監督から次の作戦の指示が出た。



「全員を上げて攻撃か…」


そう頭の上で呟いた鬼道くんにコールドスプレーをやっている手を止めて目を合わせた。鬼道くんも少しだけ疑問を感じているように思える。でも円堂くんや鬼道くんは監督に指示を受け入れているのでまだ良い方かもしれない。


「円堂くんに頑張って貰わないと、だね」

「…なるほど、」


オレンジのバンダナを視界に入れてそう言うと、納得したような声が降ってきた。いや私全然分からないんだけど。なんで納得しているの。そんなこんなしていると後半戦が始まった。













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