私に未来を予知する能力はないけれど、この後どうなるかはなんとなく分かっていた。現れた不審者達、豪炎寺くんのミス、ジェミニストーム(言えた!)の攻撃的なサッカー、突然の戦略、1人でゴールを守る円堂くん。
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思った通り、前半戦と同じようにシュートがどんどん決まっていった。その度に円堂くんは弾き飛ばされたり一緒にゴールをしたり。見ているこっちが痛いような気持ちになっていった。
その後は緑の人の必殺技で円堂くんのマジン・ザ・ハンドは砕け、ゴールを突き破って隣のビルにボールがぶつかった。固まったままの皆に声を掛けて、マネージャー軍と共にアイシングや怪我の手当の準備をする。
「…エイリア学園、」
普通の人間のように見えるがその身体能力は見た目以上。本当に宇宙人のようにも見えるが、それは多分違うのではないだろうか。何が目的かは分からないけれど、今の私には下唇を小さく噛んでフィールドに飛び出すのを我慢することしか出来なかった。
そして鹿公園に皆で戻ってくる。一ノ瀬くん?や風丸くんが円堂くんを心配する中、染岡くんは監督のやり方が気に入らないように文句を言っていた。
「だが、あの作戦に従わなかったらオレたちは必ず病院行きだったな」
そう呟く鬼道くんに皆ハッとしたように顔を上げる。私は自分が参加するなんて言わなければ、と落ち込んでいる塔子ちゃんの肩に手を置いて「大丈夫」となだめた。一ノ瀬?くんの「じゃあ監督は俺たちを守るために…」という言葉に頷くように円堂くんが声を上げた。
「それだけじゃないんだ、監督は奴等を使って俺を特訓させてくれていたんだ」
鬼道くんと目が合うと、彼は少し口を釣り上げたように笑った。なんだろうと思って首を傾げると鬼道くんは呆れたようにため息を吐いた。このやろうと思って飛びかかろうとすると(一種のスキンシップです)キャラバンから瞳子監督が降りてきた。その視線は豪炎寺くんに向いている。
私も豪炎寺くんに視線をやる。すると一瞬目が合った彼は視線を逸してしまった。「豪炎寺くん…」と小さく呟くと次に瞳子監督の「あなたにはチームから離れてもらいます」という言葉が降りてきた。
ああ、やっぱり。今の豪炎寺くんとは一緒にエイリア学園を倒すのは難しそうに思えた。あの不審者達が豪炎寺くんを監視している以上、彼は彼のサッカーをすることが出来ない。
「監督、どういうことですか。出て行けって…」
「私の使命は史上最強のチームを作ること。そのチームに豪炎寺君は必要ないだけのことよ」
円堂くんが信じられないような顔で瞳子監督を見る。監督の近くに居た私に円堂くんが視線を移したが、私はその視線を受け止めきれずに逸してしまった。
森の中へ豪炎寺くんを追いかけるようにして行ってしまう円堂くんに手を伸ばすが、それは円堂くんによって振り払われた。
「みょうじ…」
「大丈夫、」
鬼道くんが声を掛けてくれたが、私は何故円堂くんから目を逸らしてしまったのだろうかと後悔していた。