円堂くんを呼んでくるように瞳子監督から言われたので、私はそのまま彼等を追いかけた。森を抜けたところで2人がいるのが見えて、ゆっくりと近づく。
豪炎寺くんと目が合った私は苦笑いをした。円堂くんはその視線の先に気付いたようで、後ろを振り返る。私は彼等に色々言おうと思ったが喉から出てこなくなってしまった。
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「次帰ってくるときは、もっと強くなってないと駄目だよ」
「――ああ、」
なんとか絞り出した声は少し震えてしまっていたが、豪炎寺くんは少しだけ笑ってその場を去っていった。「絶対帰ってこいよー!」という円堂くんの叫びはあの小さな背中に届いていることを願う。
2人でその背中を見送った後、円堂くんがこちらを向いた。突然の事だったので「うお、」と女の子らしくない声を出してしまった。
「手、ごめんな」
「うーん、なんのことかな?」
きっと彼は私の手を振り払った事を謝っているのだろうと思ったから、私は知らん顔して振り払われた方の手で頬を掻いた。
「なまえって…ホントひねくれてるよな」
呆れたように言う円堂くんに私の眉間に皺が寄る。この馬鹿は私に喧嘩を売りましたので後悔させてやりたいと思います。その喧嘩買った!
「円堂くんに言われたくないんですけど」
「俺は素直だ!」
「自分で言うか普通!キャラを自覚しないで!キャラ的に!」
2人でギャーギャーとモメていると遅かったので鬼道くんやら風丸くんやらが呼びに来てくれた。まだ言い足りないがここは風丸くんのかっこよさに免じて許してやろうと思う。
さっきまでしょげてた円堂くんが少し元気になったようで安心した。戻るとまた染岡くんが瞳子監督に文句を言っていて頭が痛くなった。
一ノ瀬?くんに「どうだった?」と聞かれて少しだけ苦笑いをする。円堂くんは「いっちまった」と情けなく言った。染岡くんに色々言われたけど円堂くんはサッカーの話でこの件をまとめてしまった。
土門くん?が「ったく、1人でゲームセットしちまった…アイツって奴はよぉ!」(勝手に盛ってます)と言うと「別れは新しい出会いの…キックオフだ!豪炎寺フォーエバー!」(勝手に盛ってます)と言ってその場は大いに盛り上がった。私の脳内も盛り上がぅた。
「1人で…ゲームセット…」
土門?くんの言い回しが気に入った私は今度タイミングがあったら使ってみようと思う。土門くんかっこいい。その後、瞳子監督の携帯が鳴って北海道にエースストライカーを探しに行くことになった。
話を聞いていると1人で10点取ったり熊殺しだったり、かなりワイルドな少年のようだ。北海道は雪ん子の儚げなイメージがあったのだが、とんだサバンナなようだ。