塔子ちゃんのお父さんが見つかったという知らせも入って、「良かったね」と肩を叩くと彼女は東京には行かないと言い出した。
「…東京には戻らない!あたし、あいつらに心底ムカついてるの。だから、円堂たちといっしょに戦う!」
宣言した塔子ちゃんに苦笑いをする。円堂くんも同じように「地上最強のサッカーチームを作ろうぜ!」なんて言ってるけど、多分彼のことだろうから東京に寄ってお父さんに会わせるつもりなのかなと思った。
35
移動中に各自就寝ということになった。彼等はすぐに眠りに付いてしまい、私は中々寝れずにいた。最後の瞳子監督が皆を確認してから座席に付くと運転手の古株さんを残して皆静かに寝息を立てた。
だがしかし、壁山くんの近くで寝ていると思った以上に彼のいびきは煩かった。まだ暗い中で眠い目を擦って近くの空いている席を探すと、同じようにいびきが煩くて目を覚ました塔子ちゃんが手招きしてくれた。
「隣、座るか?」
「いいの?」
「ん」
間を開けてくれた塔子ちゃんにお礼を言ってお邪魔する。座席はマネージャーが3人で余裕な程なので、中学生4人でも座れるくらいの広さがあった。塔子ちゃんの隣にお邪魔して、そういえば塔子ちゃんの隣は誰だったかなと横を向く。
「き、…っ!」
ゴーグルをしたまま寝ている鬼道くんが視界に入って塔子ちゃんの方へ向き直ると「どうした?」なんてなんとも思っていない声が聞こえてきた。そうだよ、塔子ちゃんは鬼道くんと隣だったよ忘れてたよ。
「ちょ、鬼道くんなら言ってよ!」
「別に大丈夫だろ、こんないびきの中で寝てるみたいだし」
「心の準備というものがね」
近くにあった鬼道くんの顔を思い出して心臓がばっくんばっくん言っている中、こそこそと喋るが鬼道くんの顔が窓側を向いたので喋るのをやめた。まだ寝てるとは思うが、起こしてしまいそうな気がする。塔子ちゃんも眠そうなので彼女に側にくっついて寝ることにした。