君の手を引いて走れ!

□特訓編
2ページ/7ページ



「見せてあげるよ」


吹雪士郎くんがそう言うと白恋イレブンが皆を特訓所に案内してくれた。その後を少し遅れて追うようにする。少し力を入れて握った拳は少し痛かった。


果たして、自分はあんな走りだっただろうか。いつもより重く感じる体は旅先での疲れを表しているのかもしれない。もっと速く、もっと強くならなければ。


紺子ちゃんに「なまえさんも早くー!」と声を掛けられて我に返ると、笑って皆の背中を追いかけた。



42

吹雪士郎くん提案のスノーボードでの特訓は、思いの外皆は苦戦しているようだった。私もスノーボードなんて初めてやるけど、これは案外楽しいかもしれない。目の前を滑る青いマントを追って私も降りた。


「…なんでお前は俺を追う」

「鬼道くんのマント気になる」


ひらひらと風の抵抗を受けるマントを指で指してやると、なんとも嫌そうな顔をされてしまった。マントなんか付けてたら、正直風の抵抗が大変そうだなと思う。


トレードマークが沢山ある鬼道くんは羨ましいなとジロジロ見ていると先に行かれてしまった。近くで倒れている円堂くんに手を貸してから私も上に上がった。ちょっと疲れたから休憩しようかな、なんて考えてボードを外す。すると開放的になった足はかなり軽く感じた。


「なまえさん!もうマスターして凄いです!」


嬉しそうに寄ってくる音無さんの手にはカメラが握られていた。個人的なあれかと思って苦笑いすると「もちろんなまえさんも写してますから!」と言ってこちらにカメラを向ける。頑張ってるなぁと思っているとカシャッという音が聞こえてきた。


「えっ今撮った!私半目じゃなかった!?今瞬きしちゃったよ!」

「大丈夫です!半目でもいい写真です!」

「ま、マジすか」

「マジです」


写真が半目じゃないことを祈り、皆の特訓を上で見ていると今日もゆっくりと日は落ちていった。そういえば風丸くんが何か少し無理をしているように見えたけれど大丈夫だろうか。陸上部で一緒に部活をしている時だって1人だけタイムがあまり伸びなかった時期があり、それでかなり無理をして筋を少し痛めてしまった時もあった。


きっと彼のことだからまた誰にも離さないで1人で抱え込むのだろう。私の気のせいならいいのだが。夕飯を食べに向かう長い廊下の中、彼の後ろ姿から目が離せなかった。










次へ
前へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ