君の手を引いて走れ!

□特訓編
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「アストロブレイク!!」


緑のレーゼの必殺シュートは塔子ちゃんと壁山くんのディフェンスを破って円堂くんの元へ真っ直ぐと威力を失わないまま迫ってくる。


ヒヤリと冷や汗が伝うのと同時に円堂くんの必殺技はレーゼの必殺シュートを止めることが出来なかった。そのまま前半戦が終了した。



45

ベンチに戻ってくる選手にタオルを渡してやると、瞳子監督は皆に後半戦の指示を出した。


「吹雪君、シュートは解禁よ。後半はFWに上がって。点を取りにいくわ」


後半戦では攻めに行くのか、確かに皆して少しずつ動きに対応出来ているように見えた。いやこれは音無さんのファイルを盗み見て気付いたとかではない。決してそうではない。確かにチラリと見えたけれども。


「それと――、」


そう言って瞳子監督が私の方を振り返った。視線が合って少し肩が強ばるのが分かった。鬼道くんにタオルを渡す途中だったのでそのまま手で握りしめた。(ぐいぐいと引っ張られて流石に離した)


「後半はみょうじさんも導入するわ」

「ほ、ホントですか…!」


感無量です。私は急いで上に着ていたジャージを脱いでユニフォーム姿になった。私と交代になったのは一ノ瀬?くんで少し申し訳なくなったが、彼が「頑張って」と肩を叩いてくれたので少し元気になれた。


私がポジショニングすると鬼道くんが戦略を教えてくれた。でも口パクだからなんて言ってるかイマイチ分からない。モール、も、カット、して、あ、あ、れ?


「モールってなんですか」

「だから…っ!」


鬼道くんと私は以心伝心の仲かと思っていたけれどイマイチ通じない。まだまだ仲は浅いようで私は鬼道くんの口パクをマスターしたいと思った。しびれを切らして私の近くまで来てくれる司令塔に軽く謝る。


「すいません」

「ボールをカットして上がれと言っている」

「把握!」


敬礼をすると鬼道くんはそのまま私の横の方へポジショニングした。同じMFなのでどうしても隣になってしまう。まぁ学校でも鬼道くんの隣の席は私なのでこれはこれでいいのではないだろうか。(そしたらその隣は円堂くんになってしまうが)


視線を感じて顔を上げるとレーゼと目が合った。こちらをジッと見ている彼には少し恨みがある。なんたってこの前の奈良の時に私のことを選手としてカウントしなかった張本人だ。少しだけ睨んでみるとちょっと驚かれた。いや今回ばかりは私が驚きたい。


宇宙人も人間だなぁと思っていると、レーゼ様の「人間は我々に抵抗しても無意味だということを教えてやる」というありがたいお言葉の後を追うように後半戦開始のホイッスルが鳴った。私は鬼道くんと共にフィールドを駆け上がった。









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