「みおちゃん、ぱぱが出てるよ」
「ぱぱだー!」
ふとテレビを見るとサッカー中継がやっていたので娘と遊ぶ手を止めてテレビを見るように促す。すると喜んで画面に張り付くようにして一生懸命中継を見ていた。
サッカーを見るのは好きみたいで、本人が小さい頃からサッカー部塗れで育った所為なのだろうけど。一郎太がシュートを決めたところで顔がアップになる。嬉しそうに喜んでいる辺りは昔と変わっていない。
「ぱぱすごーい」
ソファーの上で跳ねて画面の一郎太のように喜んでいる我が子に微笑む。絶叫のスタンドが画面に映ると、やはり彼は人気があるのだなぁと改めて思う。学生時代もそりゃあまぁ凄かったが。
「そろそろケーキ作ろうか?」
「つくるー!」
私がそう声を掛けるとソファーから降りてキッチンに向かう私に付いてくる。カレンダーに赤く丸を付けている今日は一郎太の誕生日だった。
リーグ戦があるので帰って来れないようなのだが、一応お祝いはしたいので一郎太には内緒で2人でケーキを作ることにしたのだ。
「いちごどれ並べる?」
「ぜんぶ!」
いちごや生クリームをつまみ食いして口いっぱいに頬張っている我が子は一体誰に似たのか、私か。でもこれはこれで可愛いと思うので放っておこう。
欲張って全部乗っけると「きゃー!」とみおちゃんが喜びだした。これどうやって切ればいいんだろうと少し悩んだが、小さいサイズのケーキは2人でつつくことにしよう。
大きな画面で一太郎とテレビ電話を繋ぐと、打ち上げ途中だと思われる本人が出た。あまり飲んでいないところを見ると流石プロだなぁと染み染み思った。みおちゃんがニヤニヤとしているのでなんだなんだと不思議がっている。画面の端では壁山くんも顔を出した。
「一太郎!せーの、」
みおちゃんと一緒に「お誕生日おめでとう」と言うと一瞬驚いた顔になって、それで甘ったるく笑った。後ろにいた壁山くんが「おめでとうッス!」と大きな声で言うと周りにいた選手も祝福した。
「そうか…今日だったな」
「もう、自分の誕生日も忘れちゃったの?」
「ままとつくったんだよ!ぱぱのすきないちご!」
昔からケーキは、女子の私を差し置いていちごがたくさん乗ったものを選んでいた一郎太を思い出して少し笑う。一郎太は「ふーってやって!」と騒ぐみおちゃんをなだめて言われた通り画面越しにケーキに立ったロウソクに息を吹きかけた。
同じタイミングで2人でロウソクの火を消してやると一郎太はかなり驚いて、後ろの壁山くんは「火が消えた!」と騒いでいる。きっとお酒が入っているのだろう。
24回目の一郎太の誕生日は画面越しだったが、それから帰ってきた時に3人でまたお祝いをしたのでこれはこれでありだと思った。またいちごのたくさん乗ったケーキを注文されて、変わらないなぁと思った。
24回目の誕生日