シリーズ

□正しい君の抱きしめ方
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カレンダーはだいぶ前に捲っていた。6月から7月にかけてだいぶ暑くなったなあ。


2つに割るソーダのアイスをかじりながら店長に元気に挨拶して(アイス半分奪われた)いつも通り水色と白のストライプの服に着替える。


自分の苗字の書いたネームカードを胸ポケットに挟んで店長と交代した。



始まった7月下旬


夕方は違う人が入ったので久しぶりに深夜までのシフトだ。3時間くらいの間なので何事もなく終われればいいのだけど。


あれからあの赤髪の男の子とは会っていない。いや、多分来ているのだろうけど時間が被ることはなかった。


「(久しぶりに拝んで癒されたいわ)」


なんて、美青年は目の保養になりますからね。最近就活も頑張っているしご褒美が欲しいものだ。あの男の子にはいい迷惑だろうけど。


レジに立っていると少しガラの悪い学生の男の子が数人来店した。にやにやしているのでなんか怪しいと思って私は棚を整理しながらチラチラと学生に目をやる。


また陽気な音楽と共に誰か来店してきた。今はそれどころじゃないのに!でも笑顔で振り向けばそこにはいつぞやの赤髪の美少年がいた。


「いらっしゃいませ」


少し驚いた顔をされた。顔に何か付いているのかと思って触ってみるが何も付いてはいないようだ。こそこそと話し声が聞こえてそっちに集中する。


学生達は電池パックをポケットの中に入れた。そして辺りを見回して入口へと向かう。私は急いで追い掛けて店内を出た学生1人の肩を掴んだ。


「ちょっと待ちなさい」

「ハァ?なんだよ」

「ポケットに入れたの出しなさい」

「えー何?オネーサン疑ってんの?」

「俺等なんもしてませーん」


近くに寄って今更ながら大きくて怯みそうになる。最近の子は発育がいいんだね。お姉さんも発育よくなりたいよ。(主に胸とか胸とか)年上の威厳を見せようとキッと睨むと向こうはヘラヘラと笑う。


「今なら学校には言わないから、早く」

「っるせぇなァ…」


催促するとそのうちの1人が機嫌を損ねたようで、私の方へずんずんと歩いてくる。びっくりして肩が揺れる。


「やってねぇって言ってんじゃん」


大きな手が私の肩を掴もうとした。どどどどうしよう。助けて正義のヒーロー!こういう時ってどうすればヒーローが来るんだっけ、呼べばいいのかな。でも私最近のヒーロー知らない。


「…ス、スーパーマン!」

「――危ないよ」


ぎゅっと目を瞑れば何かがぶつかった様な音がする。でも私は痛くない。恐る恐る目を開ければ倒れてる学生と、赤い髪。


「スーパーマンじゃなくてすいません」

「え、」


足元にサッカーボールが転がっているので、多分彼はそれを蹴って学生を倒してしまったのだろう。倒れていない学生が驚いたように彼を指差す。


「お前、サッカー部の…!」

「万引きしたの、見たよ。…そういえばバスケ部って大会近かったよね」

「…チッ」


電池パックを私に放り投げてその場を去っていく学生達はなんだか噛ませ犬の雰囲気がした。私はその場にしゃかんで電池パックを拾う。赤髪の彼にお礼を言って私は自分の行動の浅はかさに軽く落ち込んだ。


そうだ、彼等に最初から「充電コーナーはあちらです」って言えばよかったんだ。




―――――――
―――――

長さバラバラすみません!





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