短妄想駄文

□LAST SAMURAI(5000hit記念、『ありがちprologue〜』主人公、他作品出張、救済、GANTZ)
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 セガール+GANTZ装備。

 ―――何だ、只のチートキャラか。





























































 目を覚ましてまず確認したのは、秋斗の全く知らない部屋だった。

 一般家庭には余り見られないだろう立派な照明は有る。だが家具らしき物は何一つ無い。
 汚れ一つ無い白色壁紙が、この部屋全体の殺風景さをより引き立てる。

 秋斗は不意に、横のベランダへと視界を移す。
 そして驚愕。
 何と外には東京タワーが見えたのだ。現在は夜らしく、辺りは真っ暗だが、少し下を見れば都会らしい過剰な人工的な光が眼球を刺激する。

 つまり此処は埼玉県麻帆良市では無い。
 見慣れない風景に、いきなり置かれた状況。
 流石の秋斗にも僅かな焦りが生まれていた。


「何だ…また新しい奴が来たのか」


 背後から聞こえてきた自分以外の声に、秋斗は初めて意識を周囲に回す。

 何時頃から居たのだろう。
 御世辞にも広いとは言えない部屋の中に、大勢の人間達がひしめき合っていた。
 しかも大半が妙なコスプレ――黒いラバースーツの様なものを身に着けている。
 数少ない私服の者達は怪奇を目の当りにしたかの如き視線を彼等に向けている。

 意識を向けていなかったとはいえ、先程までは確実に人一人存在していなかった筈だ。秋斗は思考を巡らす。
 秋斗の脳裏に、一般人には使用不可能の、とある一つの術が思い浮かぶ。
 親友であるエヴァも使っていた、魔力を用いて自分自身や物体を指定した場所まで瞬間移動する魔法、転移魔法。
 上級者にもなれば、使用魔力によっては数キロ単位での転移が可能となるそれは、特に緊急事態の時などに重宝されていた。

 どんな状況下でも、即座に現場へ飛べるという利点は素晴らしいの一言。
 交通手段が発達した現代では減少しただろうが、それでも凶悪犯罪の通報を受けた警察や治安維持部隊はそれが出来ずに手遅れになる事も有る。

 実際、秋斗自身も何度も助けられている。
 彼としては極めて不本意だが、表裏関係無く事件に巻き込まれる事例が非常に多く、逐一知り合いの魔法先生にお世話になっていた。
 ―――それでも事件の大半が解決後で、対応してもらったのは後始末であったが。

 声の主はコスプレ集団の仲間の気味の悪い男だった。
 長らく切っていないであろう、肩口まで伸びた白髪交じりの長髪。半開きにした口から不潔な黄色の歯が覗く。


「…にしてもデケェ奴だなあ。おめぇよりも有るんでねぇべか?」

「うるせ…」


 男は爬虫類の様な目を更に細め、笑みを深めながら、確かに周囲より頭一つ出るのっぽの男に問い掛ける。
 だがのっぽの男はそう答えたっきり、黙り込んだまま何も答えない。
 どうやら平均よりも高い背の高さに多少の自信に優越感を持っていたらしい。顔を微妙に強張らせ、悔しさを滲ませているのが証拠だ。

 爬虫類目の男は表情を変えずに、秋斗の全身をまじまじと観察する。
 特に欠点も無い平凡な顔立ちに、高級感の有る薄目の黒のスーツ。後頭部が尻尾の様に髪紐で纏められた髪。

 それだけなら特に脅威の様なものは感じなかった。
 背の高さを除けば何処にでも居そうな善人だ。偽りの情に訴えて騙すか、武器で脅して利用するかはしても、恐れる必要性は無い。
 だが視点を下へと下げた瞬間、男は全身が強張るのを感じた。

 秋斗もその目が何を映しているのかを察した。
 彼が下げている左手に握られていたのは――日本刀。通常のものより厚く長い刀身を誇る胴田貫と呼ばれるそれは、存在感が十分過ぎた。
 

「へぇ…」


 獲物を見付けた様に、爬虫類の目が怪しく光るのを秋斗は見逃さなかった。


「兄ちゃん、パンピーにしては随分良いもん持ってんじゃねぇべか」


 その声の直後、部屋に居る人間達の大半が秋斗に畏れ混じりの視線を向けた。
 それはそうだ。武器という目に見える脅威を携えた男が眼前に居るのだ。
 対抗出来る武器を持たない者達にとって、秋斗はこれ以上無い恐怖の対象であった。

 秋斗としてはコスプレ集団の一部の反応がそれ程でも無いのが気になったが、一先ず爬虫類目の男の方に意識を集中する。
 今迄の経験上、この男は環境によっては簡単に下種外道の類いへと変貌する典型的なチンピラと判断して良い。
 これが血気盛んな若者であれば対処し易いのだが、男は違う。

 見た目からして三十代半ばかそれ付近。
 それなりに人生経験を積んでおり、若さ特有の純粋さや素直さは摩耗し、人を信じるより騙す事に秀でている人種だ。
 痛い目を見て反省するタイプなら救いは有るが、それでも無理なら手の施し様が無い。

 手を出して来るならやり返すが、来ないなら不干渉を決め込めば良い。
 秋斗はそう考えていたが、それを尻目に爬虫類目の男はじゃがんだ体勢から立ち上がると、秋斗目指して歩み始めた。


「そんな物騒なもん持ってっと恐がられるべ?ここは年長者の俺が保管しといてやるよ」

「…おい石橋(いしばし)、その変にしといて――」

「うっせぇぞ汐原(しのはら)!」


 多分リーダー的な立ち位置なのか、短く刈り込んだ短髪に太い眉の穏便そうな雰囲気の男が横から制止の声を上げる。
 石橋と呼ばれた爬虫類目の男はそれを大声で跳ね除け、足を止める様子が無い。

 秋斗は冷めた目で石橋を正面から見据える。
 口ではそう言っているが、その本心は真逆だろうと悟る。
 返す気など更々無く、後で裏のルートで売り払って遊ぶ金にでもするつもりか。

 やがて二人の距離は一メートル以内まで詰められる。


「へへへ、なぁに、大人しく渡してくれれば何もしねぇさ…」

「石橋!!」


 石橋は下卑た笑い声を発しながら、徐に手を伸ばす。

 だが当然の如く、秋斗は反射的に男の手を払っていた。


「…ああ?」

「触らないでもらえますか?」


 パシン、という乾いた音が部屋中に響き渡る。

 それが予想外だったらしい。汐原とその傍らの美少女の目が驚愕で見開かれる。
 それは手を払った事よりも、平凡な男が荒事に慣れたチンピラに真正面から堂々と言い返した事に対するものだった。

 秋斗としては当たり前の反応である。
 石橋の様な人種にこの刀を渡すのは愚行だというもの有るが、そう易々と他人に触れさせられる物ではないのが一番の理由だ。
 斬鉄剣という銘のこの刀は、卓巳が魔力の使い過ぎで倒れ掛ける程に苦労して創り上げた物。
 当たり前だ。幾ら英霊エミヤの能力とは言え、架空の宝具を概念を含めて創造するなど無茶苦茶だ。魔改造と膨大な魔力が無ければ不可能だったろう。
 そうでなくとも、未だに超えられない壁が有るが、長い時を共に過ごし、弟分の様な存在となっている彼からの贈り物だ。
 そんな大切な物を下種に穢されるなど許せる筈がない。

 案の定、石橋は怒りを露にし始める。
 格下だと思っていた者からの逆襲など予想していなかったのだろう。見る見る内に眉間に深い皺が寄り、こめかみには血管は浮き出る。


「てめぇ、大人しくしてりゃ調子乗りやがって!!!」


 石橋は口から唾を飛ばして喚きながら、前に踏み込んだ。































「――っ懐里(かいり)!!」

「ああ…!」


 石橋は遂にチンピラお約束の強硬手段に出た。
 右手を握り締め、それを初対面のスーツ姿の青年の顔面目掛けて力一杯突き出そうとしている。

 恋人の神功明里(じんぐうあかり)の呼び声に応じ、汐原海里は石橋を止める為に飛び出した。
 自分達が今身に着けているスーツはパワードスーツと同じで、装着者の防御力と身体能力を飛躍的に上げる効果が有る。
 その状態で一般人を殴ろうものなら、怪我どころか骨すら意図も簡単に粉砕してしまう。
 石橋はその事を理解しているのか。







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