Get your life!(ダイゴ長編夢)
□第二話 雪原の少女
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明け方、船の入港する汽笛の音とともにセイラは飛び起きた。
――まずい!!
すぐに降りなくては、船員に見つかってしまう!そう思い甲板に飛び出すと、まだ入港していなかった。あれは合図だったのか。船頭の方に目をやると、船員のポケモンらしいペリッパーがこちらを見つめているのに気がついた。
「…あ」
しまった。このまま騒がれれば見つかってしまう!
しかしペリッパーは、
「ガー」
と一回鳴いたきり騒ぐ気配はない。ただただ珍しそうにセイラを見ている。セイラはその様子に気づいて、
「見逃して、くれるの?」
とペリッパーに尋ねた。ペリッパーは三秒ほど間をおいて、
「ガー」
と返事した。どうやらそうだと言ってるらしい。
「ありがとう」
そう言うとセイラはウエストポーチの中から袋に包まれたクッキーを一枚取り出して、ペリッパーに向かって放った。
「ガー」
ペリッパーは嬉しそうに食べていた。その時船が入港したので、完全に停船する前にセイラは救命用の毛布を使って飛び降りた。船頭から、まだペリッパーがセイラを見つめていた。
「バイバイ」
――悪いけど、この毛布貰うね。だから代わりにこれを、
セイラは持っていた指輪を投げた。それは何て事はない、屋敷にはいくらでもあったアクセサリーの一つだが、それでも高額なものだった。指輪は朝日に輝いて弧を描くと、ペリッパーの口に受け止められた。その姿を見届けると、セイラは走り出した。
外は吹雪いていた。まずはこの町を出なくてはいけないが、この天気では行くのは厳しいかもしれない。
―でも、追っ手が同じ考えを持てば、うまく姿を消せる。
セイラは、自分の行動力に賭けた。追っ手が自分のことをただの世間知らずのお嬢様だと思えば、まさか吹雪で有名な217番道路までは逃げないと思うだろう。
――だったら、今行くしかない!!
逃げ切る為には山越えをしなくてはならない。テンガン山を越え、人混みに紛れるためにハクタイに入る。そこでほとぼりが冷めるのを待ってからソノオ、コトブキ、クロガネと回ってうまく姿を眩まそう。だからそのために、食料などを買わなくてはならない。セイラは小さな店で手早く準備を済ませると、急いで217番道路に向かった。途中通り過ぎたキッサキジム前で、三つ編みおさげの少女が氷タイプのポケモンと共にバトルの練習をしていた。
朝早くからすごいな、と思いながらセイラは通り過ぎて行った。