Get your life!(ダイゴ長編夢)

□第三話 カンナギ遺跡での遭遇
1ページ/3ページ



「本当に、ありがとうございました!!」

すっかり回復した桃色の髪のジムリーダーは、セイラに深々と頭を下げた。


次の日の夕方になって、他のトレーナーや山男と共に夕食の準備をしていると、

「おーい、スモモちゃんが起きたぞ!!」

という声がした。さすがにその場の全員で行くのは良くないので、ロッジの主人である山男のおじさんとスモモを連れてきた私だけでスモモちゃんの居る部屋へ向かった。

そして今に至る。スモモちゃんは礼儀正しい女の子で、私は好感を持った。ただ、山男のおじさんは渋い顔をしている。

「ただなぁスモモちゃん、薄着はダメだ。雪山は麓ですら十分に危険なんだ。今回はたまたまこの嬢ちゃんがいたから良かったものの、普通なら死んでるんだ。自然を甘く見るな」

「そんな…、甘く見てなんか、」

「ダメだ。そんな歳で死んでどうする、ユキカブリが協力していなかったらルカリオどころかそこの嬢ちゃんだってお前さんを担いでる間に死んでいたかもしれないんだ」

そう言われるとスモモちゃんはしゅんとうなだれた。山男のおじさんの言葉は正論だと思う。いくら何でもノースリーブに裸足はないだろう。それにルカリオだって、スモモちゃんを運ぼうとして深みにはまっていたのだから。

山男が出て行くと、スモモちゃんは小さな声で

「……ごめんなさい…」

と呟いた。私は、「大丈夫」と返してから尋ねた。

「でも、どうしてあんなカッコで」

「…強く、なりたくて…」

「って言ってよく無茶するって聞いたよ?」

「…っ、」

「無理しないで。これ、あげるから」

私はスモモちゃん用に買った防寒具セットをベットに置いた。ロッジの近くのお店で食料の買い出しついでに買ったものだ。本当は、「修行のため」では無いこと位、分かっていた。山男のおじさんから聞いたのだ。スモモの父はゲームコーナーによくいて、高額なジムの運営費は全てスモモのファイトマネーで賄われているのだと。だからきっと防寒具を買うお金など無いのだろう。

(だったら別に、ちょっとくらい甘えさせたっていいじゃない)

甘える大人が居なかったのは自分も同じ。だからせめてこの子には、自分を頼ってもらってもいい。知らず知らずのうちにそんな意識が芽生えた。

「ありがとう…、ございます、」


やはり遭難したのは怖かったのか、スモモちゃんは小刻みに震えて泣き始めた。私はよしよし、といいながらスモモちゃんを抱きしめた。ルカリオが食事のトレイを持ってくるまで、そうしていた。



翌朝、スモモちゃんは早くに私の部屋に来た。そして開口一番、

「セイラさん、私と一緒にキッサキシティに行きませんか!?」

「えっ…?キッサキ?」


何でも、キッサキジムリーダーのスズナさんと合同練習をするそうだ。そのあとで、是非お礼がしたいから私にトバリシティに来てほしいのだそうだ。追っ手がいるかも知れないのでキッサキに行くのは断ったが、スモモちゃんと共にトバリシティに行くのは了承した。ジムリーダーともなると二人とも忙しいので今日一日で練習を終え、スモモちゃんは明日にもここを発つそうだ。だから私はもう一日ロッジに泊まって、明日の朝スモモちゃんと合流する事になった。


(私が一人で行くよりは心強いし、身を隠すなら人口の多いトバリでもいいかも知れない)


セイラはそう思いながらロッジの薪割りの手伝いをしていた。もう一日泊めてもらうのなら代わりにある程度働くのがこのロッジのルールだった。

そんなセイラを上空から見つめている影があった。淡い黄色の頭部に閉ざされた双眸、特徴的な尾。エイチ湖の神・ユクシーだった。ユクシーは昨日からセイラを見ていた。寒冷地の湖に棲む知識の神は、楽しそうに舞い上がると、湖に戻っていった。

(面白い子がいたものですね。ポケモンがあんなに心を開くなんて)

ユクシーの独り言を聞いた者は誰もいなかった。



次へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ