Get your life!(ダイゴ長編夢)
□番外編 シロナ独奏曲
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シンオウ地方で彼女を知らない者はいない。チャンピオンのシロナは、パートナーのガブリアスと共に部屋のベッドに腰掛けた。
「ねぇガブリアス、セイラさんはトバリに向かったわね」
「グヮウ」
シロナは昼間出会ったセイラという少し年下の女性の事を思った。セイラとは、何時間か前に別れたばかりだ。
「事情は知ってるわ。すぐにダイゴに知らせたいけど、盗聴されてるだろうし、それに」
そこでシロナは言葉を止めた。ホウエン地方チャンピオン・ダイゴ最愛の人。ダイゴからよくセイラの話を聞いていたシロナは、セイラの事も、今回姿をくらましたことも知っていた。歪んだ愛に母ごと縛られ、自由を求めた少女。きっと屋敷から出たことなど数えるほどしかないだろう。
「――それに、まだセイラさん自身知らないことが多いかも知れない。
だったらもう少し、外の世界を知ってもいいんじゃないかな?」
あの子にはきっと何かある。まだポケモンも持ってはいないけれど、でもそんな感じがする。
恋人も、自由な生活も、チャンピオンの座も、
(欲しい物は、自力で掴まなくちゃ)
セイラにはその意志がある。だから自分は手を出すべきではない。だからシロナはセイラの事を知らないふりをしていたのだ。ガブリアスにはそのことは分かっていた。
(あんなに可愛い子、忘れる訳がないじゃない)
パーティじゃ話しそびれちゃったけど。少し生意気な同僚とでも言うべきダイゴが愛する人の最大の魅力は、きっと雰囲気にも表れている優しい人間性なのだ。
(頑張ってね、セイラさん)
自分は、ささやかになら手助けをしていくことにしよう。
そう思いながらシロナは「ギンガ団を殲滅せよ」と書かれた手紙に目を落とした。その封筒には「極秘」と書かれている。それは、ポケモンリーグ協会がチャンピオンに課す影の使命だった。
「あの男はアカギ…このままではトバリのセイラさんが危ないわね」
自分の「手助け」は「使命」と紙一重なのだけれど。それでも出来ることはさせて頂戴ね。
「ガブリアス、明日はトバリビルを落とすわよ」
見守る者は一人、待つ者は一人、追う者は数知れず。