Get your life!(ダイゴ長編夢)
□第五話 ノモセでの出会い
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「よし、」
鋏を置くと、私は鏡に映る自分の新たな姿を見つめた。こうして見ると、随分と印象が変わったと思う。何だかドキドキした。とりあえずこれでいいだろう。私はスモモちゃんに貸してもらっている自宅兼ジムの一室から出た。
「おはよースモモちゃん」
「あっセイラさんおはようご……えぇえぇッ!?」
トバリに着き二日。「何とか礼をさせてくれ」と言って聞かないスモモちゃんの厚意に甘えて、私は何日かスモモちゃんの自宅兼ジムに泊めてもらうことにした。スモモちゃんが驚いたのは、腰まであった私の長い髪が、バッサリと切られて襟足が肩に届く程度の長さになっていたからだった。スモモちゃんは面白いくらい驚いた様子で口を開いた。
「なっ、なっ、セイラさんっ、どーしちゃったんですかその髪!?」
「あぁ、これ?ちょっと気分で」
まさか追っ手を誤魔化すため、なんて言えない。
「気分ってそんな…もったいないです」
「まぁまぁ。それより今日はノモセシティに行くんでしょ?私はもう準備できたよ」
私がそう言うと、スモモちゃんは慌てて準備し始めた。スモモちゃんは今日、ノモセのジムリーダー・マキシさんと練習試合するためノモセに行く予定だ。それに私も同行するのだ。スモモちゃんは、私がシンオウの事はよく分からないと言ったら、色んな街を見せようとしてくれる。私も自分でここまで来た事は無かったから、とても助かる。
しばらくすると、スモモちゃんも準備が出来たようだった。手持ちポケモン達の調子は最高だ。
「それじゃあ行きましょうか、セイラさん!」
二人はノモセに向かって歩き出した。その近くにはギンガ団本部の奇怪なビルが建っている。中では、通信機と非常事態を告げるベルがけたたましく鳴り響いていた。
『何!?トバリ本部は壊滅だと!?本当かマーズ!』
「そーよ。アタシだって驚いたわ。帰ってきたら、隠れてた一人を除いてみぃんな捕まってた」
『一体誰が…』
「チャンピオンのシロナ」
そうでしょ、とマーズが下っ端に尋ねると、彼は震えながら頷いた。
『…そうか。アカギ様に報告してくれ』
そう言うと、ノモセにいたサターンは通信を切り、ギリッと唇を噛んだ。いくら手薄だったとは言え、チャンピオン一人に壊滅させられるなんて。
(トバリの奴らにはセイラとか言う娘を追わせようとしたのに)
サターンはアカギが「捕まえろ」と言った若い女性の画像を改めて見る。パトロンの家の娘らしい。最初はただの家出だと思っていたが、何故家から逃げたのか、調べてみると実に面白い。
(これはちょっと、気になるかもな)
不憫な女性の逃亡劇。それは様々なものに退屈したサターンの興味を強く引いた。この顔は、絶望と涙に濡れる時、どんなに美しく歪むだろう。