Get your life!(ダイゴ長編夢)

□プロローグ 降りしきる雨の中で
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ホウエン地方に君臨する大企業・デボンコーポレーション。その本社の副社長室の主は、大量の書類に目を通しながら一人パソコンに向かっていた。カタカタという無機質な音と、外の雨の音だけが部屋に響く。夜のビルから見える曇天の空は、まるでこの部屋の主の心をそのまま反映させたように重苦しい。

(セイラ…)

デボンの御曹司と名高い青年は、相も変わらずパソコンのキーボードを打ち続けた。長かった仕事は、やっと終わった。一息着いてからデスクの上の写真立ての中の写真を見ると、あの時の自分と彼女が笑い合っている。過ぎた日の幸せな姿をダイゴは見つめた。

(ねぇセイラ、)

その時、ドアを遠慮がちにノックする音が聞こえた。入るように言うと、どこか気まずそうな様子で秘書が入ってきた。

「副社長、セイラ様ですが…、今日もご消息が掴めないままだったそうです……。」

「そうか…分かった」

ああ。またか。
秘書はおずおずと出て行った。秘書は自分の慕うダイゴを落胆させるこの時が一番嫌いだった。静寂を取り戻した部屋に一人残されたダイゴは窓辺に向かう。彼女を、この世で一番大事に思う彼女を探しに行きたい。今すぐにでも飛び出したい。しかし、父のツワブキ社長が病床に伏せる今、デボンとその社員の生活を支えるのは自分しかいない。探しに行くことを望んでも、それは叶わなかった。閉じた瞼にすぐに浮かぶ彼女の名をダイゴは反芻し続ける。

(セイラ、)

そんな彼を心配してか、メタグロスがボールから飛び出してそっと彼に身を寄せた。ダイゴはメタグロスの体を撫でたが、その目は相変わらず窓から見える空を虚ろに捉えていた。

(教えてくれ、君はどこにいるんだ)

雨は、まだ降り続いている。

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