Get your life!(ダイゴ長編夢)

□第20話 彼の人の訪れ
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ここは、ホウエン地方はサイユウシティ。夕方、ポケモンリーグの建物から出てきたミクリは、そのままトクサネシティに友人を訪ねた。


「…やはりいないか。カナズミの病院に行こう、ミロカロス」


「ミー…」


彼の家に明かりは灯っていない。やはり、家に帰れる状況ではないのだろう。


(最近会ってないが、ダイゴは大丈夫なんだろうか?社長のことも、セイラのこともある…)


つい一年ほど前までジムリーダーだった自分。チャンピオンのダイゴは親友で、その恋人のセイラとも仲が良かった。そんなダイゴに、あの日突然チャンピオンの座を託されたのだ。


「ダイゴ、これは一体どういうことなんだ!?」


「…父さんが病気で倒れた。これから僕はデボンを支えていかないといけない。だからミクリ、お前にチャンピオンの座を託す」


その前には、セイラの母親は死に、ダイゴと引き離されそうになったセイラは家を飛び出していた。それからもう半年近く経つが、未だにセイラの消息は掴めていない。この事態はまるでダイゴに追い討ちをかけているようだ。


(一人で抱えるものが多すぎる…、ダイゴまで倒れたらどうするんだ)


夜になってからカナズミに着いた。カナズミの大病院、そこにツワブキ社長は入院している。デボンの受付嬢はダイゴはツワブキ社長の所に行ったと言っていたから、私は迷うことなくそこに向かい、明かりの灯った病室をドアをノックした。


「ダイゴ、元気かい?」


「…ミクリ。久しぶりだ」

ベッドには青ざめた顔のツワブキ社長。過労による極度のストレスで起きた脳出血の一種らしい。緊急手術で一命は取り留めたものの、まだ意識は戻らない。


一旦病室を出た私たちはロビーで話をした。私は少しでもダイゴを元気づけようとしたが、ダイゴの表情は当然ながら明るくはない。そして話題がセイラの事になった時、ダイゴは一枚の紙を取り出した。


「これは…?」


「今日入った情報だ…」


そう言うとダイゴは頭を抱え込んだ。私も、その書類を見て愕然とした。


「セイラがノモセでギンガ団関連の爆破事件に巻き込まれて、入院してただって…?」


一気に顔が青ざめた私に、ダイゴが説明した。


「あくまで検査入院だったらしい。でもあの家はギンガ団のパトロンでもあったんだ。セイラが危ない…。しかもセイラはまだ行方不明になったままだ」


「……!」


何て事だ。しかもそれは、報告書を見る限りじゃ1ヶ月以上も前の話じゃないか。遙か遠くのシンオウにホウエンから人を探しにやるのだから情報はうまく掴めないかもしれないが、確かにこのままではセイラは危ない。


「ダイゴ」


私はダイゴに呼び掛けた。一つ、提案があったのだ。


「あと1ヶ月後に、私はシンオウのコンテスト会場にゲストとして呼ばれているんだ。良かったらその時に、セイラの手掛かりを探そう」


謙遜する気など無いが、私ほど有名になると宣伝も大きなものになる。ということは、セイラが無事ならば私とコンタクトを取ろうとする可能性も十二分にあるという事だ。


「ああ。ありがとう」


ダイゴは力無く微笑んだ。苦労がたたったのだろう。だが、ライバルとして、ダイゴがかつて見せていたあの不敵な笑みがもうそこに無いのは、悲しむべき事だった。
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