Get your life!(2)

□駆け引き
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第33話 駆け引き


「さあ…教えてくれ。今どんな気分だ?」

たった一つの目玉に憎悪の光が満ち満ちている。大きく開かれたその眼は情けなく怯えた顔の自身を映す。まるで一つの宝玉の様だ。追いつめられたギンガ団員の男は息を呑んだ。

―――宝玉、だなんて。こんな時にまで任務の事が頭に浮かぶのか。

その大きな瞳に怯みはしたが、その眼はあまりに美しすぎた。
俺はどこまでも悪人らしい。情けないものや弱弱しいものは嫌いだ。
だらしない自分の顔に興醒めして、一気に怯えが消えた。そしてこれを映すもの、それ自体が、自身が手に入れなければならないものだという事を、改めて認識する。
一呼吸の後、ギンガ団の男、ショウは、にやりと笑った。


「どんな気分だって?それは俺が聞きたいよ。」

「何?」

「随分荒れてんじゃねえか?ブチ切れて、自分の仲間まで襲ってよ。そんなにあのメガネの姉ちゃんが大事か?」

「・・・・・・」

「その割にはお前、何もいう事聞いてないな。心配もしてねえように見えるぜ?」

「黙れ……!!」


痛い所を突かれたらしい。キルリアの表情が歪む。ショウはにやりと笑った。
感情が乱れた。これなら勝てる。
ただ、ヘマをすれば自分がやられる。向こうで倒れている部下、ツクヨは守らなければ。
視界の端で、ツクヨの通信機器がキラリと光った。

「黙らねえよ。お前にはこっちに来てもらうんだからな。逃げられたら堪らないんだよ」


まずい。緋雨は自分が動揺したことを悟った。
―――俺は、一体何をしている…?
しかし、引くわけにはいかない。男の制服のロゴマークを見る。
憎しみだけで生きてきた緋雨の揺らぎは、ここで収まった。
酷く赤い色の目で、男を見下ろした。

「同じことだ。俺はお前たちを潰す。」

「へえ」

随分恨まれてるんだな俺たち、と男が笑うと、緋雨は激昂した。
男の足元に再び技を放つ。轟音と砂埃が舞った。男は狼狽えた。

「緋雨!!やめて、お願い!!」

戦わないで、逃げましょう、とセイラは途切れ途切れに叫んだ。
その言葉にジュノーは顔を顰めたが、この状況ではどうにもならない事も事実だ。ベティは神妙な面持ちで緋雨を見ている。ビィはセイラの足を押さえていて、緋雨からは表情が見えない。
哀しげなセイラの顔を見て、緋雨は口を開いた。

「セイラ」

聞いてくれ。

「俺の主人だった人は、ギンガ団に殺された」

「え……」

「だから俺はボスのアカギを殺す。俺はそのために生きているんだ」


言葉を失ったセイラから、男へと視線を戻す。焼け焦げた地面の傍らで、男は冷や汗をかいている。

「おいおい…まじかよ…」

「勿論お前も例外じゃない」

「……いいのか?それをしたら、お前も俺たちと同じになるんだぞ?」

「構わないさ」

何の迷いもなく緋雨は答えた。寂しげな瞳が一転、色を変えた。
まずい。これは俺を殺す目だ。
一気に周りの空気が変わった。

「緋雨…!!」

セイラの懇願もかき消すように、緋雨の手の中にシャドーボールが作られていく。

ヤバい。

ギンガ団のショウはとっさに腕で顔を覆った。この技の前には何の意味もなさないと分かっていても、そうせずにはいられない。

「緋雨、だめ!!やめて!!!」

セイラの叫び声が響いた、その瞬間だった。

「そこまでです」

「……セイラ!!」

先ほど緋雨に吹き飛ばされたはずの、ギンガ団のツクヨが立っていた。
手には鋭いナイフ。それはセイラの喉元に当てられている。


「動いたらこの人を殺します」


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