Get your life!(2)

□神々の話
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第36話 神々の話

やっとここまで追い詰めた。
なのに、簡単に捕まってやるつもりはないらしい。
奴らの体が閃光に包まれる。


「―ッ!!クソッ!!」


隻眼のキルリア、そして、ターゲットのセイラ。どこにそんな力が残っていたのか、奴らはテレポートで消えた。
仲間を呼んだ手前、目の前で消えられたのは大恥だ。俺はまたジュピター様にも怒鳴られるだろう。
――しかし。


「ツクヨ、大丈夫か」

「…はい。少し休めば、大丈夫です」


部下が無事だっただけ、良しとしてやる。
ショウは、拳を強く握っていた。




光に包まれたあと、セイラたちは薄暗い建物の中に降り立った。


「ここは…?」


何が起きたのか一瞬わからなかったセイラたちは、瞬時に緋雨のテレポートの力だと理解した。

「緋雨…!!」

ぐったりと倒れこんだ緋雨に、セイラは慌てて回復薬を使う。
わずかながらに回復した緋雨は、口を開く。


「ありがとう、大丈夫だ。…ここは神聖な祈りの場だ。普段は開いていないし、奴らが狙うような金目のものはないから、ここなら安全だ」

「お前、テレポートできたのか…?それに、どうしてそんなことを知ってんだ?」


ジュノーの問いかけに、緋雨は静かに答えた。


「さっきのテレポートは、俺もどうしてできたのか分からない。前回は亜空間が歪んでいてものすごく負荷がかかったが、さっきはテレポートしたいと僅かに思っただけで出来てしまった」

「それって、緋雨の力の問題なの?」


ビィの質問に、緋雨は目を伏せた。


「いいや、これは俺の問題じゃない。きっと他のエスパーポケモンでも同じことを言うだろう。空間の神に、異常が起きている」

「空間の神…?」

シンオウ昔話で、そんな話を聞いたことはある。しかし、どういうことだろうか。きょとんとするセイラに、ベティが答える。


「あたし達も聞いたことがあるわ。この世界はアルセウスってポケモンが創造したものなのよ。」

「それでね、そのアルセウスからは、時間を司るディアルガと、空間を司るパルキアってポケモンが生まれたんですって」

「そのポケモンたちは確かにいて、そして今、パルキアに異常が起きているってことなの?」

緋雨はああ、と頷いた。
セイラは驚いた。まさか、神話にきいたポケモンが、本当にいたなんて。そして、ポケモンたちがそれを知っているなんて。
多少回復した緋雨に、ジュノーが口を開いた。

「確かにお前は、前にテレポートした時やたらと消耗してたな。だが今さっきのは、もっと体力がなかったのに簡単にテレポート出来てる。お前の言う通りなんだろうな」

「だが、なんでそんなことになってんだ…?」


その時、セイラは思い出した。先ほどまで対峙していた、ギンガ団の男の台詞を。


「アカギさまは、新しい世界をお創りになりたいんだと」


セイラに衝撃が走った。
そんな、まさか。
そんな大それたこと、考えるはずが、ない。
でも、そうじゃなければ、一体なんだと言うの?
ノモセの湿原での事件を思い出す。マキシさんは、地下に眠る特殊な鉱物が奪われたと言っていた。何に使うかも分からないのに、不気味だって…。

とたんに、震えが止まらなくなった。新しい世界。それは、自分たちが支配者になるといった類の話ではなくて…


「そうだ、セイラ」


緋雨は静かに答えた。


「これは奴らの仕業だ。そして、アカギの目的はこの世界を消して文字通り新しい世界を創る事。」


それ故に、俺の前のパートナーは、奴らと戦う事になったんだ。

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