Get your life!(2)
□彼女の決意
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第41話 彼女の決意
「どうしてこんなところでまで争わなくちゃいけないの・・・!」
私はダイゴに会いたいだけなのに。
セイラのすすり泣く声が、気まずい沈黙の中で響く。
その痛々しいほどの沈黙を破ったのはビィだった。
「セイラの言うとおりだよ。ごめんね、セイラ」
どのみち僕たち、今こんな状態じゃ戦えないよねぇ、とビィは言った。
見ればそうだ、全員が負傷している。セイラはスコルピに足を刺され、服も泥だらけ。
ビィは、泣いているセイラの足元にすりより、手で覆われた顔の隙間からこぼれる涙を優しく舐めた。セイラもビィに腕を回し、自分でも涙をぬぐい始めた。
ビィも、ベティも、ジュノーも、そして緋雨も、大小あれどダメージは大きい。
今は、この大きな街を占領している悪の組織に立ち向かえる力などなかった。
「今は、未来のことよりこの現状をどうにかすることを考えた方が良さそうね」
ベティはため息をついた。
「なんでこうなっちゃったのかしら」
ここから、セイラたちは作戦を考えた。
暫定的に身を隠す場所として、緋雨が脳裏に少し思い浮かべただけでたどり着いてしまったこの場所。静謐な教会に金品目当てに押し入る者がいるとは考えにくいが、悪党にこちらの理屈など通用しない。
「俺のテレポートは不安定で使えるか保証できない。暗くなるまでここに隠れて、ダメージを回復させよう」
さっきは感情的になってすまなかった、と緋雨。冷静さを取り戻し、すこし気まずそうだ。
「問題はそれからだろ。ここから出たとして、大勢来てるんなら俺らだけじゃ手に負えねぇ。どうかわすよ」
ジュノーもいくらか冷静になったようだ。これはバトルではない。
有象無象の、ルールを守りもしない、フェアでもない敵との戦い。
ましてこちらには、敵に狙われた「お姫様」がいるのだ。
勝負好きで気性の荒いジュノーだが、決して無謀なことはしない。
「森の方から逃げるなら、この町から出るのは簡単だろうけど・・・」
しばらく沈黙していたセイラが口を開いた。
皆一斉にセイラの方を見た。
か弱くて優しい守るべき者。それでも、自分たちの運命を決める者。その言葉は重大だった。
「メリッサさんたちの無事を確かめたいし、外から助けを呼ばなくちゃ」
もう泣きたい気分でいっぱいだったし、現状に対して理解が追い付かない。
ギンガ団の卑劣さにぞっとするし、せっかくのコンテストに向けた日々も、無駄になってしまった。こんな状態ではコンテストは中止だ。ミクリにも会えない。つまり、ダイゴに自分の消息を知らせる事も出来ない。
それに、緋雨の話。ギンガ団に主人を殺された?ギンガ団の目的は新世界をつくること、そのために現に神と呼ばれるポケモンすら影響を受けている?そんな途方もないことを考える組織に、運命だから立ち向かえ?
むちゃくちゃだ。何もかもむちゃくちゃだとしか言えない。
それでも、今こうしてこの街にいるなら、目の前のことをどうにかするしかない。
セイラは動こう、と言った。