Get your life!(2)
□始動
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45話 始動
静かな教会の中。セイラ達は機会を窺っていた。
街はずれにひっそりと建つ教会とはいえ、高窓からは街中の様子がよく見える。
はじめは、逃げ惑う人々の姿が見えていたが、彼らは追いやられてしまったようだ。
今はギンガ団員たちが大声で話しながら行きかい、奪った物品やポケモンたちを運んで行ったり、こっそりと自身のポケットに潜ませた金品を見ながらにやついたりしている。
「ひどいもんね」
「うん。ホントに起こってることだって思いたくないよ」
「どうやらこの教会の人たちも連れていかれたか逃げたあとなんだろうな」
ベティ、ビィ、ジュノーは沈黙しきれず話している。あまりにも異様な光景の前に、冷静さを保とうと必死なのだ。一方、緋雨は目を瞑り、静かに体力の回復を図っている。誰よりもギンガ団を憎む緋雨ではあるが、セイラを泣かせてしまったことで冷静さをいくらか取り戻したようだ。今、自分がすべきことは、感情に任せてギンガ団を攻撃することではなく、セイラを守り、外にこの異常な状況を知らせることだ。
「セイラ、だいじょうぶ?」
「うん。大丈夫だよ、ビィ」
そしてセイラも黙っていた。胸元のロケットを見つめている。
死んでしまった母と、恋人のダイゴの写真が入っているロケット。それを見つめるセイラの瞳は、いつも寂しげだった。しかし、今は、寂しさだけでなく、立ち向かうための強さを祈っているようにも見えた。
それでも怪我をした足は痛む。ビィはそれを案じたが、セイラは気丈にふるまった。
町の様子を窺っていると、次第にギンガ団員の人数が減っていくように見える。
はじめは町中を闊歩していたが、どこか一か所に集まりつつあるようだ。町の中心部に向かっているらしく、何人かのグループがみなそちらへ向かっていくのが見えた。
「メリッサさん、大丈夫かな」
セイラがぽつりと呟いた。お昼に弁当を届けに行ったとき、なぜか皆強引にフルバトルに持ち込んでくると言っていた。あれは、メリッサを足止めさせる工作なのではないか。
メリッサほどの実力者ならば、簡単にやられはしないはずだし、万が一の場合にもフワライドで脱出できるだろう。だからまずは外に助けを呼びに行くべきだ。
これは緋雨の案だった。セイラはメリッサが無事か心配だから様子を見に行きたいと言ったが、他の皆は緋雨に賛成した。メリッサが簡単に負けるとも思えないし、何より、自分たちは今満足に戦える状態ではないのだ。ギンガ団に狙われているセイラが人質に取られれば、それはかえってメリッサを窮地に追い込むことになる、と言われてしまえば、従うよりほかはなかった。
「大分減ってきたな。集合がかかったようだ」
緋雨はちらりとセイラの方を見た。セイラは小さく頷いた。
「みんな、行こう」
セイラ達は教会を脱出した。目指すはクロガネシティ、そこからこの異常事態を知らせるのだ。