Get your life!(2)

□脱出
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第46話 脱出

夕暮れ時、人気の少なくなってきたヨスガシティの教会から、セイラ達は飛び出した。
目的地は、ヨスガシティを東に脱出し、テンガン山を越えた先のクロガネシティだ。

「山越えなら奴らも追いきれないし、簡単にクロガネへ抜ける道を知っている」

足を怪我したセイラには少し酷だが、と案を出したのは緋雨だ。山があるとは言え、クロガネシティはここから一番近い。

「なら、行くしかないよ」

セイラは静かに、しかし力強く言った。
泣いていても、仕方ないなら。この状況を変えられるのは自分だけなら。
これ以上、留まるわけにはいかないのだ。

通りからはギンガ団員の姿は消えていた。いるとすれば、要所要所でゲートの見張りをしている者くらいだろう。
しかし、油断はできない。静まり返った街、踏みにじられ、荒らされた街。
煌びやかだったであろうショーウィンドウのガラスは破壊され、中の飾りは散らばっている。美しさで知られたヨスガのれんが畳には、そのような、あらゆるものが散乱している。それは、一緒くたに見てしまえば、「瓦礫」や「ゴミ」という言葉で表されてしまうだろう。惨たらしくも、そんな状態になってしまった。しかし、そのひとつひとつは、間違いなくこの街に暮らす人やポケモンたちの、かけがえのない生活の一部だったものだった。
セイラはぐっと下唇を噛んだ。緋雨のボールがかたかたと揺れる。ビィとジュノ―も心配しているような気配がする。

「セイラ、大丈夫?」

最低限連れ歩けるポケモンとして、傍にいたベティが声をかけた。

「…うん。」

セイラは怪我した足を少々引きずりつつも、前に進んでいった。
ゴーストタイプのベティは、どんな暗がりでも目がよく見える。それに、足音もしない。
静かに街の中を飛んで先回りしては、セイラを安全な道へと導いた。
「セイラ、あの角の先に二人いるわ。」

「うん…、ベティ、『さいみんじゅつ』」

こうして、二人は進んでいく。幸いにも、後ろから追われる気配はない。
本当に、見張り以外はどこかへ集まったようだ。だが、そうだとすれば…

(メリッサさんが、危ないかもしれない)

ふらつきながらも、セイラは先を急いだ。
教会の脇から裏通りを経て、道なき道を進んだ。
ゲートは当然、ふさがれているだろう。藪のなかを突き進み、208番道路まで出れば、あとはテンガン山の抜け道を進むだけだ。
 
と、雑木林の開けた先に、巨大な装置を見つけた。セイラは瞬間的に身を隠したが、無防備にも傍には誰も立っていない。置きっぱなしの荷物を見る限り、そこにいたであろうギンガ団員たちにも急ぎの集合がかかったのかもしれない。

セイラとベティは機械をよく観察した。なにやら妙な電波を発しているようだ。
これだけの異常事態に、助けが来る気配すらないとすれば、それは―――

「通信遮断機かもしれないね」

これでも、機械はナギサで少々いじったのだ。形状から見ても推測はつく。

「ジュノ―、お願い」

「おう」

セイラはジュノ―をボールから出した。下手に壊して大きな物音をたてるより、ショートさせてしまった方が早い。
一瞬の閃光の刹那、「G」のロゴのついた巨大な装置は静かに停止した。



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