Get your life!(2)

□地下神殿の予言
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第49話 地下神殿の予言

ここはクロガネシティ。ポケモンジム前までやってきていたのは、ミオシティのジムリーダー・トウガン。そして彼の修行仲間のゲンだ。
トウガンは口ひげを触りながら呟いた。

「ヒョウタのやつ、ちゃんとやってるだろうな?」

「彼ならしっかりしてますから、大丈夫ですよ」

ゲンがふふ、と笑って答えた。

「何しろあれに会うのも久々だ。怠けてるようならキッチリ修行をつけてやらんと!」

トウガンは強気だが、実際のところはこの街のジムリーダーである息子・ヒョウタが可愛くて仕方ない。もっとも、ヒョウタもジムリーダーと一部の実力者しか出入りが許されない「しょうぶどころ」への出入りを許されているのだから、実力は申し分ないのだが。

久々に息子に会いに行きがてら、クロガネ地下の未発掘のエリアを一緒に探索しに行こう。
トウガンがゲンをそう誘い、ゲンもそれに乗ったのが数日前だ。
この親子とは仲がいい。自分とルカリオの波導があれば、開拓したての地下通路でも危険な目に遭うことも少ないだろうし、それに、

―――なぜか分からないが、行った方が良い気がする。

ある種の勘が働き、ゲンはトウガンに同行することにした。
トウガンとしては、いつも鋼鉄島で修行ばかりしているゲンを心配しての誘いなのだが、
本人は知る由もない。

「父さん!それにゲンさんも!」

お久しぶりです、と、こちらに駆け寄って笑みを投げかけるヒョウタの姿は、文字通りの「好青年」だった。

「おうヒョウタ!元気にしてたか?」

「うん、大丈夫だよ、父さん!」

仲良さげに挨拶を交わしたあと、三人はさっそく地下通路へ潜った。
最近開拓されたルートというのは、炭鉱の採掘作業中に発見された謎の横穴だった。
水路などの名残なのか、はたまた何かの隠し通路なのか。
なんにせよ、まずは安全を確認しなければならない。
三人はまず、横穴に崩落の心配がないか調べた。

「なかなか強度があるな」

「波導で見ても、亀裂は見当たらない。進んでも大丈夫だ」

「父さん、ゲンさん。風が吹いてるよ」

ヒョウタのいう通りだった。微々たる風が向こうへ吹いている。どうやらこの向こうには外につながる空間があるようだ。

「よし、慎重に進むぞ」

三人は静かに進んだ。横穴は古い時代に作られたもののようで、岩を敷き詰めることでトンネル状になっている。

しばらく進むと、三人は開けた空間に出た。

「これは、地下神殿か?」

その空間には一面の壁画と、岩の台が複数置かれていた。
正面に大きく描かれているのは、伝説の創造神アルセウス。
その両脇に描かれるのはディアルガとパルキアだろう。そして、その他に
湖と、三匹のポケモンの姿が描かれている。
これだけなら、カンナギシティの壁画に代表されるような、典型的なシンオウ神話の図柄だといえるだろう。
だが。

「…この絵、襲われている、のか…?」

この神殿の図柄は異様だった。
アルセウスの目の前に描かれた化け物からは、赤い鎖のようなものが幾重にも出ており、それはディアルガとパルキアを責めさいなんでいる。そして彼らは、アルセウスに向かい手を伸ばしているが、それは助けを求めているのか、あるいは傷つけようとしているのか区別はつかない。三つの湖は干上がり、それぞれの神々は無念そうにうなだれている。
正面を見据えたアルセウスは怒気をはらみ、その怒りは炎の絵柄として壁一面を埋め尽くしている。壁画の下部にはその炎に焼かれた人々やポケモンの姿が描かれ、この世の地獄を表していた。
なにより恐ろしいのは、アルセウスの背後の陰。
黒い影の中に不気味な目玉が描かれ、この景色を見つめているのである。

「いったいこれは…」

ヒョウタは言葉を失った。こんな絵柄は見たことがない。
トウガンもまたこの壁画に圧倒されていた。地下空間でこんな絵をみたら、常人はたまらないだろう。
しかしゲンは冷静だった。

「カンナギの壁画と同じ時代に描かれたものだろうね。この時代、終末の予言というものがあったと本で読んだことがあるよ」

この時代、長く続いた冷害に、災害が度重なったという。人々は救いを求める一方で、この世の終わりを感じていたのかもしれない。

「そうなんですね…、それにしても、不気味だなぁ」

学術的な解釈がついたことで少し不安が和らいだようで、ヒョウタはあたりを調べ始めた。積年の塵が降り積もった台の上には、石板が複数枚乗っている。
この空間にはまだ続きがありそうだが、先は土砂で埋もれていた。

「不思議なプレートだね」

ゲンは呟いた。そして、壁画の左斜め上に太陽を模した図柄を見つけた。
その光の玉はアルセウスに向かっているように見える。どういう訳か、その光の玉の下は炎を免れている。


『とおいばしょより きたるもの かみのいかりを しずめるべく たたかう』

(これは、予言?)

古代文字の謎めいた文の意味を長考しかけたゲンだったが、

「よし、もういいだろう。一旦出るぞ」

積年の塵芥の降り積もった場所に、専用の装備なしで長時間滞在するのは危険だ。
トウガンの合図で、一行は地上に上がった。



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