Get your life!(2)
□虫の報せ
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第50話 虫の報せ
「ふう、外の空気が気持ちいや」
地上に上がって真っ先にヒョウタがそう言った。
いつものヒョウタなら、化石の発掘に夢中になれば時間を忘れてしまうのだが、やはりあの地下神殿は不気味だったのだろう。
努めて明るく振舞っているが、装備品を片付ける動きがいつもより早い。
そんな時だ。
「ヒョウタさーん!」
クロガネジムの少年が、慌てた様子でやってきた。
「協会から、ヒョウタさんあてに急ぎの連絡がきてました!至急折り返してくださいと言ってます!」
ヒョウタは驚いた。何事だろうか。
「ヒョウタ、ここは儂らでやっておくから先に行け」
協会からの連絡には、ジム備え付けのモニターで応じることになっている。
ヒョウタは二人にすみません、と言って、少年と共に走っていった。
「妙な感じだな」
トウガンがぼそりと呟いた一言に、ゲンはええ、と答えた。
先ほどの遺跡も、このただならぬ様子も。諸々含めての言葉なのだろう。
片づけを終えた二人は、クロガネジムへと向かって歩き始めた。
「あの神殿にあったプレート、何か特殊な力がありそうだったな」
「そうですね、何かのポケモンの力が秘められているようでした」
そうか、とトウガンは呟いた。あのプレートに関して、それ以上のことは分からない。
それにしても、ヒョウタは一体、何の件で呼ばれたのだろうか?
あの不気味な壁画にいくらか心もとないような気にでもなったか、何か不穏なことが起こりそうな気さえしてくる。
ふと見上げた西の空さえ、妙に明るく不気味に見える。
逆光でテンガン山の陰が一層濃くなり、辺りも薄暗くなる様子が、なお一層妙な印象である。
ジムリーダーたる自分が、そんな情けないことでどうする、と一瞬自分を戒めたが、これは自分だけでないらしい。
ふと横を見ると、ゲンが波導を使って、何かを探っていた。
「ゲン、妙な空だな。向こうには何かあるのか」
「…トウガンさん。不穏な気配の中に、強い波導を感じます」
テンガン山の方から、何かがこちらへ来ます。
かなり強い意志をもって。
(これから、何かが起こるな)
その「何か」とやらは、と言いかけたまま、ジムの奥まで入ると、ヒョウタが深刻な顔をしてして支度していた。
「父さん、ゲンさん」
ヒョウタの腰には、モンスターボールが6つセットされていた。
―――本気だ。すぐに二人は非常事態を察知した。
「お二人の力を貸してください。今、ヨスガシティが襲われています」
今すぐ向かわなくては、大変なことになる。