Get your life!(2)

□ミクリの矜持
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第59話 ミクリの矜持

一方、こちらはヨスガシティ北側から街中へ向かっていたミクリとハンサム。
ジム方面での喧騒を聞きつけた二人は、騒ぎの方向へ向かって走っていた。

(仲間と通信できた。今に全方位から特殊部隊を向かわせると応答があったし、今から戦闘状態に入ってもすぐに間に合うだろう)

ハンサムは、自分の前を颯爽と走るミクリの姿を見て、ふと懐かしさを感じた。

(誰かと組むのは、ダン以来か)

かつて組んでいた戦友・ダン。
非常に優秀な人物であったが、ギンガ団の潜入調査で命を落としてしまった。
そして、そのパートナーのポケモンは、片目と心に大きな傷を負い、姿を消した。

(これは、お前たちの敵討ちでもある)

しかし、とハンサムは冷静になるように努めた。感情の乱れは失敗を招くからだ。

(もう誰も、死なせたくない)

ハンサムは強く想った。

走り抜けた二人は、ジムのある広場まで来た。
喧騒の正体、それは、すでに到着していたトレーナーたちと、ギンガ団との激しい戦闘だった。
敵味方入り交じる戦闘の中に、ミクリは優雅に身を投じた。

「ミロカロス、れいとうビーム!」

ギンガ団員たちのどよめきが起こる。
こうした戦闘の際には、まずトレーナーを狙う―――先ほどのハンサムの戦い方で学んだことだ。
だが、高威力の技を、ひとりひとりに当てたりはしない。
断続的に放たれるれいとうビームは、器用にギンガ団員とポケモンの間に氷壁を作り、彼らを引き離した。そして逃げ惑うギンガ団員たちが知らず知らずの内に、ミロカロスの技の射程範囲に収まった一瞬、一気に畳みかける。

「ミロカロス、なみのりだ!!」

現ホウエンチャンピオンの実力は圧巻だった。
ギンガ団十数名は、強烈な水技の前に一気に吹き飛ばされる。

「ミロカロス、よくやった」

周りのポケモントレーナーたちも、敵のギンガ団員も、ミクリに圧倒されていた。
その戦いは、強く、そしてとても美しかった。

(たとえどんな状況だとしても、私は私の美学を貫こう)

それがミクリの矜持だった。

「…えっ?」

少し間をおいて、驚いたような声がした。ギンガ団員たちを吹き飛ばした方角から、一人の若い女性のトレーナーがこちらを見ている。
どうやら、彼女の前にいたギンガ団員もついでに吹っ飛ばしてしまったらしく、彼女もミロカロスの水を少々かぶってしまっていた。

「すまない、君にけがはなかったかい?」

そう言ってそのトレーナーに近寄ると、見覚えのある顔だった。

「君は!!…まさか、セイラか!?」

「ミクリ…!!」

間違いない。そこにいたのは、消息不明になっていた親友の婚約者だった。



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