Get your life!(ダイゴ長編夢)

□番外編 霧中狂想曲
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私がお屋敷にあがったのは11歳の時でした。


もちろん、私の家は代々ロザンナ様やカトレア様の家に仕えてきましたから、父や母に連れられてのことです。ロザンナ様がお婿様をお取りになられ、その婿様の家に上がられるというので、その折に私も仕え始めたのです。


その時貴方に出会いましたね、エンペルト。貴方はまだポッチャマでした。


さて、まだ子供だった私には、あの家の因果など何も知らされてはいませんでした。ですから、セイラの事も、最初は旦那様の姪か妹だと思ったものです。だからよくセイラ様とお話はしました。彼女は五歳年下でありながら、随分賢かったので驚いたのを良く覚えています。




屋敷の掃除をしていた私が、普段人の入らない奥の部屋でセイラ様に出会ったのが最初でした。


「ふぅ…。疲れたな、」


少年だった私ははカタン、と箒を床に置いて、部屋の椅子に腰掛けました。ようやく屋敷での仕事に慣れてきた頃でしたが、慣れてきた頃が一番疲れるというものです。そのとき、一階の部屋の奥の、庭につながるベランダから一人の幼い少女が出てきました。


「お兄ちゃん、だあれ?」


紺色の髪に翡翠色の瞳の少女は私にそう問いかけました。しかし、まだ子供だった私が返事をする前にセイラ様は話し始めました。


「ここね、セイラの一番おきにいりの場所なんだよ…。もう入っちゃだめって言われたけど、それでもセイラここにいたいの」


「…君はここに住んでるの?」


「うん…。でも急にね、あっちのお家に行きなさいっていわれたの」


「…………。」


「ねぇお兄ちゃん、セイラね、さいきん誰かと遊んでないの…。だから、セイラとお庭であそんで?」




その時6歳のセイラ様の、どこか寂しげな表情を見た以上、そのお願いを断る理由などありませんでした。それ以来私はしばしば時間を見つけてはセイラ様の遊びに 付き合っていました。そのことはエンペルト、貴方も知らなかったでしょう。貴方のボールは掃除の時は部屋に置いていましたからね。


私は、さっきも言ったように、セイラ様のことは旦那様の親戚の子だと思っていましたから、セイラ様の面倒を見る事になんの疑いもありませんでした。だから、遊ぶ上では不都合ではないと思っていましたし、兄弟のいない私には妹のように思えましたから、むしろ楽しみだったのです。私達の花園での遊戯は誰にも見つかることはなく、気がつけば私がセイラ様と遊ぶようになって幾月も経っていました。
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