拍手御礼 キミのためなら

そう。ボクはどこにでもいる、一番平凡なポケモン。
対して強くもない、とりたてて可愛くもない。
そんな種族の、名前のない一匹だった。
キミに出会うまでは。

ノモセの湿原は気持ちいい場所だった。
綺麗な緑、澄んだ水。ボクはママとのんびり過ごすのがすきだった。
仲のいいポケモンたちもいた。探検ごっこ、鬼ごっこ、木の実あつめ、ずいぶん色々やったよ。
ボクはみんなや優しいママが大好きだったし、きっとこの気持ちはかわらないと思う。

でもね、ボク、ここにやってくる人間たちは大嫌いだった。
ずかずか入りこんで、石とか投げてくるし、鼻が曲がっちゃいそうに強いにおいの食べ物を投げ込んでくるでしょ。
それだけじゃない。何が嫌かって、その隙に、僕の仲間たちが攫われていくことだった。

「みんなはね、自分でその人についていったのよ。」

普段はバトルして、弱ったところを捕まえられるのだけどね。
ここは人間たちに守られていて、人間たちはバトルできないから。

ママはそういったけど、ボクは意味が分からなくて、すごく怒った。

「どうして!?ボクやほかのみんなのこと、どうでもよくなっちゃったの!?」

ママはちがうわ、といった。

「わたしたちポケモンと、人間たちのあいだには、ふしぎなつながりがあるの。むかしむかし、アルセウスさまの時代はね、ポケモンも人間も同じで、一緒に生きてきたの。

…だからね、このひと、という時があなたにもいつか必ず来る。わたしたちはむかし、人を助けるために、人の前に現れるようになったのだから。」


ママの言葉は、その時はよくわからなかった。
だって、ボクを見た人間たちは揃いもそろって、

「うわ、ビッパじゃん」

「こんなんいらねーよ!」

と笑いながら、石だけ投げつけてきたから。こんなやつら、助けてやろうなんて、ボクはぜったいに思わない。そう思っていた。

でもあの日。ボクを見つけたキミは、

「かわいい。…あのポケモン、ほしいな」

と言ったんだ。ママといたボクはとにかくビックリして、なんだか心臓がばくばくして、
思わずママのおなかに顔をうずめてしまった。
ママは静かに、まあ…、と呟いて、キミの方を見ているようだった。

かわいい、って、ボクのこと?
ほしいって、ボクを?仲間にしたいってこと?

あの優しそうなキミの瞳が忘れられなくて、どうしようってなった。
巣穴にもどって、ママのそばでそわそわしていたときだ。
ママが、ねぇぼうや、おまえ、あの人のところに、と言いかけたとき、

――――ものすごい爆発が起こった。

ボクとママはものすごい衝撃を受けたけど、巣穴にいたから無事だった。
でも、外は地獄だ。
見慣れた森が、きれいな湿地が、焼け焦げてぐちゃぐちゃだった。
森の仲間たちは、怪我をしたもの、どうなってしまったか分からないものもたくさんいた。
生きているものは、皆怒って、それをやった人間たちに仕返ししにいくぞと、ある方向へ向かっていく。

やっぱり人間なんて。

そう思いかけた、でも、ふいにキミの顔が浮かんで。

あのひとは、だいじょうぶかな。

人間にもいいやつとわるいやつがいる。どこかで聞いた言葉を思い出して、それなら、きっとキミだって今あぶないのかもしれないって思って。

「ママ、ボク…、」

「わかっているわ。可愛いぼうや…、元気でね」

自分でもわけがわからないまま、ボクはママとおわかれした。
ひどいにおいの中、焦げた地面を走りぬけて、必死にわるいやつらと戦おうとするキミを見つけた。
キミはボクをみつめた。

「一緒に…、戦ってくれるの?」

もちろん。

そうして、ボクはキミのポケモンになった。
なにも後悔なんてしていない。
キミはボクを、かわいいといってくれた。仲間にしたいと言ってくれた。
ボクのふるさとをめちゃめちゃにした悪い奴らと戦おうとしてくれた。

そんなキミは、実はポケモンもいなくて、頼るものもいないままに、自分の運命に立ち向かおうとしていたんだね。

ボクはキミの力になりたい。ボクならなれる。

そんな相手に出会えて、ボクはしあわせだと思う。


「ビィ、いつもありがとう」

キミは柔らかく微笑んでくれて、ボクはそれも嬉しくて。
「セイラ、こちらこそ、だよ!」

ボクはほんとうに、キミのためなら、どこまでだって力がでる気がするよ。



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