文
□気分はもう戦争
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「田仁志くん…何をたべてるの?」
「う……っ」
洞穴に潜む影を不思議そうに見つめ、何かを口にしている音が洞窟内に響いているのを聞き逃さなかった。
ギクリと気まずそうに反応した姿を見て木手は目を疑う。
信じられないという顔をする木手に田仁志は焦りを隠せない。
「やめなさいよ…お腹壊しますよ」
「わかっちゅ―さぁ!でも…っ腹へって死にそうなんやさぁ」
死 に そ う
目の前で暴走する姿、周りの状況ではとても平常心でいられないのはわかっている。
生きるか死ぬかなのだ。
木手は洞穴から出て遠くの空を仰ぎみて側で知念くんを目で捉える。
「永四郎…?」
「知念くん、離れないで」
「周りも危ないかどうか確認してきたさぁ…」
「なまから、単体行動は禁止。いいね」
「どうしたんさぁ…なにか不吉な勘でもきたんばぁ…?」
「…そんなんじゃありません」
木手がふと瞼を上げると知念はいつのまにか近くにきていた。
木手は空を見上げるのと同じ動作をする。
「永四郎はわった―が守る」
強い意志が伝わる言い方。
「自分の心配しなさいよまず」
「…あぁ」
「でも、俺を先に助けて欲しいのもありますが……しかしそれだと知念くんが…」
木手が珍しく独り言のように小さく唸りだした…。
知念は思い切り肩を掴んで揺さぶる。
「大丈夫か!?永四郎」
「…ん、なにが」
「うなされてた…から」
知念の軋む力を感じて、仕方なく思いを伝えた。
「俺を気遣っていたら…知念くんは死んでしまう……それは…嫌です」
案の定、知念は驚いた表情を木手に向ける。
「知念くんは馬鹿な事をしない、余計な事もしない上に力もあります。役に立つのは他はあと不知火くんくらいです。あなたが無くなったら困る」
「…………」
「だから、勝手な行動しないでよ…それだけ」
終わっても知念は一向に離してくれない。
「もういいでしょ知念くん…離して」
「…………」
木手はあなたもですか?と言わんばかりの視線を送ると、知念は察して肩に置く手を落とした。
「それでいい。今は言うこと聞いて、一歩間違えば死んでしまうから」
「永四郎…」
「なんですか」
「役に立つとかどうとかは分からんが…永四郎を助けるのを最優先するさ」
「ええ…そして、あなた自身も。あなたは貴重な逸材だからね」
そういいながら知念のしっかりした長い身体つきを上から下に撫でた。
知念は僅かに身震いして硬直する。
そのまま撫でながら木手はいい続けた。
「洞穴にこもって言うこと聞かない慧くんに、低脳でつっ走ってしまう甲斐くん、反発する平古場くんや、まだ子供な新垣くん。…まだまだ教育が足りない」
それに比べて、知念くんと不知火くんは優秀ですよ、従順でね
「…………」
「………(死なせない。俺を守ってくれる優秀な兵士は)」
知念ははじめて木手から触れられて…茫然とただ感触や熱を感じているしかなかった。
「知念くん、洞穴にこもってるおバカを連れてきて。移動します」
「わかった」
防空壕 非難。
学校にいたはずの生徒や先生はみなバラバラになった。