ロイアイ小説T

□リザの憂鬱
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「はあ…」

このため息は、本日何回目のものだろう。

それも もう分からないほど
目の前の書類は片付かない。

「いい加減やって頂けますか、大佐?」

寝ている大佐の肩を軽く揺する。
が、どうにも起きる気配がない。

怒る気力も失せそうになる。

「大佐…。 …大佐っ!!!」

「はい!!!」

これまでにない大声で階級を呼ぶと
彼は寝ぼけた様子で飛び起きた。

「よくこんなに仕事を溜めて眠れますね!
今すぐ片付けてもらいたいのですが!!」




「ああ、分かった」

ふああ、とあくびをしながら
いつになく大佐は素直に答えた。


助かるのは事実だが
…おかしい。


なぜこんなに素直なの?



「あの、大佐」

「何だね」

スラスラとペンを走らせながら
大佐は私を横目に見ている。



「どうしてそんなに素直に
仕事をして下さるのですか?」



その言葉に大佐は
一度その手を止め
不思議そうに私の目を見つめる。


「私に仕事をしてほしかったんじゃないのか?だからしたまでだが…」





「…何か企んでいます?」






そう言うと
「バレたか」とでも言うように
大佐は悪戯な笑みを浮かべた。



「いや、対した理由でもないんだが
…夢を見たんだ」




そりゃ、あんなに爆睡していれば夢くらい見るでしょうね。







「私が、書類を溜めて寝ている夢」








それは現実では?







そう言いたい衝動を抑えてただ私は
彼の言葉を黙って聞いた。



「そしたら君が怒るんだ。片付けろ、と。
それを素直に私は聞いて、黙って仕事をするんだ。そしたら」



「そしたら?」



「一番最後の書類がなんと、君の判が押してある婚姻届だったのさ♪」




そう話す彼は凄く嬉しそう。




「ここまで似ている状況だと、案外正夢になるかもしれないと思って。
最後に婚姻届がある事を期待して、頑張るよ」










はあ…。





そんな理由で…。





この人の考えていることがまったく分からない。



まあせいぜい、そう淡い期待と共に
頑張って下さいな。










その後








あんなにあった書類は
本気な大佐によって
1時間で片付けられた。





唖然。






「中尉!婚姻届じゃなかったじゃないか!」



「当たり前ですよ!それは夢なんですから!」







でも。







「…仕方ないですから、少しその、えと…」


「少し、何だ?」


照れて思うように言えない私とは対象に
大佐は瞳を輝かせて
私の言葉の続きを待っている。








「今夜一緒に…食事でも…」








「喜んで!!!!」



待ってました、と言わんばかりに
大佐は即答した。


今日くらいは
ご褒美をあげてもいいわよね。


ただし
その夢を正夢にしてあげることはできません。



何故なら











婚姻届を渡すのは
私から貴方に、じゃなくて








私が「貴方から」欲しいから。














end
 

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