ロイアイ小説U

□Milky Way
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きっと貴女はもっと辛いのね

だって1年に1度しか会えないんだもの


夫婦仲が良すぎて離されるなんて、可哀相


今なら貴女の気持ちが分かる気がするの





愛する夫と離れる寂しく辛い気持ち



織姫様の気持ち







待っているわ、私の彦星様
































「パパはー?」


「まだ帰って来ないって言ったでしょう?」




ローザは玄関の方に体を向けながら首だけを私に向ける。



そんな彼女の注目の対象はロイである。




ロイは大総統になってからかなり仕事が増えた。



そんな夫は今は仕事の都合により南方司令部に1ヶ月間赴くことになった。







そのため、まだまだ帰ってくるはずもない。








そのことがあまりよくわかっていない娘は、遅い遅いと口を尖らせて毎日文句を言っている。





確かに今まで ここまで会えなくなるようなことがなかったから彼女には理解し難いのだろうとは思うのだが、毎日毎日毎日言われる身にもなってほしい。





そして私はちらりと電話を見遣る。




ロイが南方に行って2週間。1度も電話がかかってくることはなかった。



忙しいのだとは思うのだが、全くないとなるとすごく心配になってしまう。



だから最近精神的に滅入っているのだと思う。






何しているのかだとかが気になって仕方がない。



























そして気がつけば7月7日。



そのことを意識したのはローザがある話をしたからであった。







「東の国には七夕ってのがあるんだよー!」


「聞いたことあるわ。織姫様と彦星様のお話ね」






そうか

今日は、丁度 七夕なのね





「ママはお願いごとあるの?」


「ローザは?『セリアと仲良しでいられるように』?」


「うん!!ママすごぉい!」


「だってあなたのママだもの!」



クスッと笑って2人で他愛もない話をしながら昼ご飯を食べたりしていた。






…のだが。






「ごちそうさま」


「ママ、もう食べないの?」

「もうお腹いっぱいなの」


「うそぉ!ママ最近ご飯あんまり食べないもん」


「少食なのよ」


「ふーん」






大食いではないがすごく少食なわけではない。

普段はそこそこに食べる。



だけど、最近はどうも食欲がわかないのである。



ローザはもりもりと食べているけれど。






















特にその日は、日が沈むのが早かった。







あっという間に夜になり、今日もまた、いつものように終わるのだと思っていた。







湯舟につかりながらそう思っていた。





そして
ロイのことばかり考えていた。


まだ連絡がとれない。


何かあったのかもしれない。


仕事が大変なのはわかるけれど…






…南方の美人と遊んでなんかないわよね…?






私はともかく、娘がいてそれはないと思うけど






「思う…けど…だって…」












声すら聴いていないんだもの。














「ママー!」


ローザが呼ぶ声がお風呂場まで聞こえる。




「何ー?どうしたのー?」



「電話だよー!」


こんな時間に?



「誰からー?セリアのお母さんー?」


「パパからーっ!」
















ざばっ







弾けるようにお風呂を出た。




急いで髪や体を拭いて、体にタオルを巻きながらリビングへ走り、ローザから受話器を受け取る。




『…もしもし?』



「ロ…!」






名前を呼んだつもりだが、声にならなかった。



ぽろぽろと暖かい涙が頬を伝い、私から言葉を発することをやめた。




『もしもし?リザか?おーい』




ロイだ、ロイの声だ

ロイが電話している、私と電話している




『聞いているかー?リザ、リーザー』



「……聞いています、ロイ…っ!」




それを言うのがやっとだった。



『…泣いてるのか?何かあったか?』


「だって…今までずっと…」


声を殺していたつもりだが、ロイにはお見通しなんだと思うと何だか悔しい。




「ずっと連絡がなかった!毎日待っていたのに電話もないし手紙もない、そのうえずっと会わないままで私は…っ」




ローザは私を見てオロオロとしている。



おそらくはロイもそうなのだろう、急に黙りだした。


そして小さく




『…すまなかった』



「……っ」



『…まだまだ文句がありそうだね』



「勿論です!」




『電話代をつかってまで文句聞くのは嫌だよリザ』



「じゃあ帰ってきたらいかがですか!?まだまだ帰ってこれませんが!」



『できれば帰りたくないね、聞いていると耳が痛いよ』


はははとロイは笑ったが、私は何だか怒りが収まらない。



だけどなんだか悲しくなってきた。



『…?リザ?聞いてる?』


「……帰りたくないとか言わないで下さい…」



『リザ…』



「どんな理由でも冗談でも、私やローザやハヤテ号達が待っているこの家に…帰りたくないなんて言わないで……」





怒りでとまっていた涙がまた溢れてきた。






『…すまない。もう言わない。…本当は、早く帰りたくて仕方なかった』



「…ん」


良かった、とコクリと頷いた。




『だから毎日、仕事をひたすら頑張った』



「……うん…」




『…開けて?』






ガチャン






ロイが電話を切るのと私が受話器を置いたのはほぼ同時だった。



勢いよく、ローザの手を引き玄関へ走る。





まさか…





…まさか






「ママ?」













……まさか。



















キィイ…




















「ただいま」












半信半疑で開けたドアの向こうには、ロイがいた。




今の今まで電話していたロイがいた。







「あ!パパ!おかえりー!」





後ろからロイを見つけたローザは飛びはねて喜んだ。





「ただいまローザ!会いたかったぞ!!」







きゃっきゃっと2人は楽しそうにするが
私はと言うと、開けたままのポーズと表情で微動だにせず立っていた。









「リザ、どうした?まだ怒ってる?」




目の前の正真正銘本物のロイは反省した子供のような顔で私を見ている。







「あ、リザ、君…痩せたね?」



そんなロイの表情は私を見て曇り始める。




『ちゃんと食べてた?寝た?ちゃんと生活を送っていた?』




後ろでローザがぷっと吹いた。




「ママとパパ、全く同じこと言ってる!」




仲良しだねーと笑いながらたたたとリビングへ駆けていった。







ロイは私の頬に触れながら言った。




「あんまり食べてないんだろう、寝てもないな?」



「それは私の台詞です!あなただって少し肉が落ちました」



「リザが食べてないと思ったからだよ」



はぁぁ…とため息をついてロイは私を抱きしめた。






「いつも終わって時間ができるのは深夜だった。寝ているのを起こしたくなくて電話できなかった。すまなかった。」



「もう…いいです…」



「今朝一時帰宅が決まって、急いで帰ってきた」



「そうですか…」




「ずっと君達の写真を胸に、頑張っていたんだよ」





抱きしめる腕に力が入る。











「やっと会えたよ、リザ」





「ロイ…っ」




私もぎゅっと抱きしめた。




もうロイを離したくなかった。



















一通り落ち着いたあと、ロイは腕を離して私に言った




「そろそろ、中に入ろうか」




「ええ」




「そんな姿を誰かに見られたくないだろう?」




「…え?」





あ!と思わず叫んだときにロイはくつくつと笑っていた。


お風呂あがりで、タオルを体に巻いただけの状態だというのをすっかり忘れていた。






挙げ句、「その姿で出てくると思わなかったから、なかなか刺激的だったよ」なんて言い出す。



「馬鹿っ!」
















後で知ったが
ロイは天の川を見たらしい。






そして自分は彦星、私は織姫だとか言って。












「そういや、ママのお願いは?」


久しぶりに3人で並んで布団に入りながら、ローザは思い出したように私を見た。



「お願い?」


「うん!パパがいない間にそんな話してたの!」


「ふーん……パパ、正解知ってるぞ!」


「なんで分かるんですか…」


「正解は、『パパに会えますように』だ!」


「そうなの?ママ?」




全くこの人は。



本当に悔しいんだから。






「…正解よ」





ふふん、と鼻をならし、ロイは自慢げに笑った。


















今日は7月7日。
















end.




ギリギリ間に合ったー!



なんか、書きたくなったので書いてみました(笑)



無事間に合って良かった!!






10.07.07

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