ロイアイ小説U

□さて今日は何の日でしょうか
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カチ カチ カチ…


夜中の11時半を過ぎている。




壁にかけてある時計が秒針をすすめる音だけがする。



執務室がそこまで静かなのは極めて珍しい。





いつもほどほどに騒がしいから、と ほぅ と溜め息をついた。





そんな静かなこの部屋で
大佐が黙々と仕事をしているのは更に珍しいことであった。














「…不満かね?」





ふと彼に目を移すと、さきほど私がついた溜め息を呆れによるものと受け取ったのか 私の様子を伺っていた。






「いえ」


「じゃあ何だ。真面目にやっているぞ」


「そうですね。何だか夢みたいです」


「…疲れの溜め息か?」


「私だって溜め息くらいつきたくなります。それよりほら、手が止まってます」




うむ、と頷きながらまた集中しだした大佐を 私はただ眺めていた。














どうして急に頑張り始めたのかしら。






まさかとは思うけど
これから情報収集?









…それとも締め切りが迫っていることに危機感を覚えてくれたのかしら?







何にしても、私には有り難いことだわ

これで少しは早く帰れるし。















なんて思いつつ、処理済みの書類の束を腕に抱えて 1度部屋を後にした。








































そして提出を済ませ執務室へ戻ると、大佐は うーん と伸びをしていた。




「おお中尉、終わったぞ!!」


「お疲れ様でした、マスタング大佐」





そう言って 労いの言葉をかけると 大佐は嬉しそうに笑った。




「この後少し用事があってね、間に合って良かったよ」


「それは良かったですね」




ああ、と頷くと彼は時計を見た。




いつの間にか時間は経っていて
見ると11時59分。



もうこんな時間 と思っていると遂に12時をさし、新しい1日を迎えてしまった。




すると




























「中尉、誕生日おめでとう」




「え?」







大佐はにこりと微笑んで私にそう言った。






「誕生日って…」



「もちろん、君のだよ」




「あ、ああ…私の……」






正直、すっかり忘れていた。



もう誕生日がめでたい歳ではないし、気にしないし。







きょとんとしていた私に





「…忘れていたのか?」


「ええ、すっかり」





やっぱりな、と言いながら大佐はちらちらと時計を見遣った。








「そういえば大佐、ご予定があるのでしょう?私のことはもういいですから」



私の言葉に、大佐は軽く首を横に振った。




「君の誕生日を祝おうと思ってね。2人とも非番にしておいたよ」



「え…」



「だから、これから私の家へ来たまえ。ハヤ…何だったかな、あの黒い犬も連れてきていいぞ」


「ちょ…非番って…」



「プレゼントが家にあるんだ。ご飯はレストランを予約したから」



「予約した…んですか?」







「…まずかったかね?」


口をぱくぱくとして大佐を指差したまま直立不動の私を見て、大佐は急にしゅんとした。









「いえ、そうじゃなくて…」









…嬉しくて。








そう言うと、うんうんと彼が抱きしめてくれた。






「今日この日、君が生まれてくれたことに感謝するよ。…愛してる」








彼の腕に抱かれて温かさに目を閉じ

私の誕生日が幸せに始まった―








end.





リザ誕生日小説です。

単に、今日あたしが、誕生日を迎えるときに

こんな感じのことがロイアイであったらいいなぁと思って書いてみました(^_^)

気に入ってもらえると嬉しいです♪





10.07.28

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