ロイアイ小説U

□今すぐ召し上がれ
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いつだって気付いてほしいの





私はここにいる


私はいつも
あなただけを想っている









たとえ応えられなくても









傍にいてほしくて。































































ある日の執務室。














「…これは何だ?」




大佐は私から受けとった白い封筒に顔をしかめていた。








「先ほど、ここに来る時に女性に渡されたんです。大佐に渡してくれと」





彼は、はぁ と 小さく溜め息をついたかと思うと顔を綻ばせた。








「そうかそうか!どこぞの将軍からの手紙かと思って焦ったが、そういうことかははは!モテる男は辛いなぁ全く!」








それはもうすごくすごく嬉しそうに開け始めた。






私はただ無表情で聞き流していたが、気になり横目で彼の表情をうかがった。







どうせまたニヤニヤと笑って、今日は予定が入ってしまったとかなんとか言って
定時きっかりに帰るんだわ。





















だけど大佐の浮かべていた笑みはいつものものとは違った。




何か意味ありげな笑み。














そしてすぐ読み終えたかと思うと、封筒に丁寧にしまい、引き出しにしまった。






















「中尉」






突然呼ばれたから少しびっくりした。





「なんでしょう?定時に帰るのでしたら、そちらの書類を…」





「今日、一緒にディナーでもどうかな?」



















「……は?」










「だから、ディナーだよ。予約をとってる訳じゃないが、急に行きたくなってね 君と」






























私と?








疑問に思いながらも、今日の予定は何もないことから 誘いを断らなかった。










「ありがとう。じゃあ、今日は一緒に帰ろうか」



「わかりました。どこのお店に行くつもりで?」





「多分、ラタトゥイユが美味しい…ところ」








曖昧な返事。

『多分』美味しいところ?




お店の名前を言わないのに何か理由はあるのかしら?












…今日の大佐、なんだか変。















とりあえずそのラタトゥイユを食べてみたい。






























なんとか仕事を終えた私達は、2人で司令部を出たのだが…。
















「気のせいでしょうか」




「何が?」




「いや…」
















あなたの家の方向に向かい過ぎているのでは?




いっそ家に帰ってしまうおつもりなのでは?















それはないか。

だって今から私とご飯に行くのだもの。























と思っていたのだが

























案の定 大佐の家に着き


気付けばそのラタトゥイユを前にして


気付けばあなたの正面に座っている













「あの…」



「予約をとっていればレストランに行けたのにすまなかったな。あ、ラタトゥイユはな、パンと一緒に食べるといい。ほら、これもよく合うんだ」





グラスに白ワインを注ぎながら微笑む大佐。



「大佐の…手作り」



「不満だったかな?すまないね」









ああ、だから店の名前を言わなかったんだな と一人納得しながら
それを口に運んだ。









大佐はただ私の反応を見ている。






















「…すごく…美味しい、です」







「そうか、良かった!!」










安心しきった顔で食べ始めた彼をよそに 私は驚きを隠せなかった。










どうして、わざわざ手料理を振る舞ってくれたんですか?










心の中でそう思うけど
口には出さない。










…ああ、そうか




きっと 他の女性達も
レストランの予約が駄目な時は こうやって家に連れ込んで、手料理を作ってあげるんだわ。











なんだつまんない









一瞬期待した自分が馬鹿みたいだった。






私だけ特別だなんて






考えるだけ虚しいわ
















「お気に召して頂けて嬉しいよ、中尉殿」







「とんでもない。ありがとう…ございます」
















温かい。
美味しい。


貴方が作った料理が食べれるのが 嬉しい

















貴方が作った料理を食べれるのが 悲しい




他の女と同じだって



分かっているけど、悲しいの

















「人生で初めて覚えた料理がこれなんだよ」



「そうですか」





柔らかく笑ってみせる




そんな料理が頂けるなんてなんて光栄なんでしょう

ねぇ、大佐殿?










「この前覚えたばっかりなんだけどな」



「へぇ………え?」











「たまには自炊しなければと思って始めてみたんだよ」





「…今まで誰かとこれを食べたことは?」











「ない!そもそもあまり人を家にあげん!」



















…今、なんて言った?






ちょっと待って

あまりあげない?
食べたことはない?















…駄目ね 自然と顔が綻んでしまう








照れ隠しに、パンとラタトゥイユを頬張る。






「そんなに美味しい?」



「美味しいです」












大佐は嬉しそうに笑った。




























この時の私は知る由もなかった。








私に封筒を渡した女性は、あの子の友達だということも






その女性はあの子が書いた手紙を 自分が書いたように私に渡していたということも





実は大佐が料理を始めたのを あの子が知っていたということも










その手紙の内容も。























『 マスタング大佐へ




こんにちは

この頃 料理を始めたらしいとハボック少尉から聞きました









なんでもラタトゥイユだとか








あらまぁすごい偶然!!





…だから大佐に
いいことを教えてあげましょう




















知っていましたか?
































私の友人は、ラタトゥイユが好きらしいですよ




























レベッカ』













end.



久しぶりの更新になりました!!

お待たせしてしまった方はすいません(>_<)




突発的に書いたものです。


ちなみにラタトゥイユはどこからきたかというと


ディ○ニーの…レ○ーの美味しいレスト○ン で 料理評論家の○ーゴの大好物だったから…←







10.11.23

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