乙夢

□罠〜side she
1ページ/1ページ



ぐちゃぐちゃにされた

もう
元には戻らないほどに…


そして貴方は
ただ、日常に帰っていく…



「ありがとう。おやすみ」

ベッドの上
事情の後を私だけが残してた

貴方…レンは
何事もなかったかのように

来た時と同じように
綺麗にスーツを身にまとっている


穢れを知らないような白い肌
そして美しい金髪

透き通る碧眼

まるで
ギリシャ彫刻のような美しさ


それが

さっきまで
私を乱し貪っていた


獣の正体



「今日も収録?」

「そうだよ?だから…」

妖しく鈍い光を宿す瞳が
伏し目がちになる。

「いってらっしゃい」

先の言葉を遮るように

私は激しさの残る
重怠い体を起こし
ベッドの上で手を振る。


―…罠にかかった私の負け


だから、
せめて縋らない女でいたい。


それが私のせめてもの意地。


「ん。いってきます」

伏し目がちだった瞳が上がれば
いつもの芸能人の姿がそこにあって

振り向きもしないで
部屋の扉を開けて出ていく彼に


惹かれてしまい
それでもいいと縋り


でも心のどこかで乾いた悲しみが襲う。


これが、私のかかった罠…―。



(追いかけるのも求めるのも)
(結局私でしかない)


もっと幸せな恋はたくさんあるのに…



/END
いつも恋は落ちたものが負けだと思う。

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ