乙夢

□罠〜side Len
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今更、引き留めることは出来なくて。


    きっと


  底なし沼のように落ちて、
抜け出せない。


これは…罠。




「ありがとう。おやすみ」


久しぶりに空いたスケジュール
迷わず連絡し

離れてた時間…空白を埋めようと


獣のように貪った。


オレがスーツを身にまとい
綺麗を取り繕ってる間

彼女はベッドの上。

ぐしゃぐしゃになったシーツの間から
官能的に伸びる細く白い足に


今すぐにでも飛びつきたい衝動を
仕事という理性で押し殺し。


  ―…仮面を纏う。


「今日も収録?」


抑揚のないソプラノで問われた。


さっきまでの色を孕んだ
あの音とあまりにも違いすぎて。


彼女の中のオレの存在が
ただこういうものでしかないのだと
いつも思い知らされる。


「そうだよ?だから…」


引き留めないよう
これ以上ハマらないよう

“もう会わない”
その一言を発しようとすると…


「いってらっしゃい。」


先の言葉を塞がれた。
  …ずるい。


そんな笑顔反則だ。


(なんで君のほうが
泣きそうな顔してるんだよ?)


淡い期待を見ないふりして
振り返ったら

いつもの彼女に戻ってるのが怖くて

振り返らず
部屋をあとにする。


高鳴る胸と
それと随伴して起こる期待。

そんなはずはないと思うのに
描く理想は
君との穏やかで幸せな未来で


―…この罠は底なしだ。


自分では到底


抜け出せないのだと思い知る。

(いっそのこと)(感情が先に死んでくれたらいいのに)


貴女がそうはさせてくれない。


/END
なんかこの二人でストーリーができそうww

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