菊丸総受お題シリーズ
□『嫉妬』
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別に菊丸だって不二がモテるの位知っているし、告白の現場を見てしまったからといって今更何か言うつもりはない。
そもそも、それでもちゃんと
“僕は英二しか好きじゃないし、好きにならないよ”
なんて言ってくれる不二にときめく事だって少なくなかった。
だが今回は違う。
その場から離れようとした菊丸の耳に届いた、涙混じりの女生徒の声…
「一度だけ…一度だけで良いので抱き締めてくださいっ!」
最後の勇気を振り絞って言っただろうその言葉に、驚いた菊丸が振り返って見たのは、小さく頷いた不二の姿だった。
一瞬だけの抱擁。
いつも自分にしてくれるのとは全然違うの位はわかる。
わかるが“怒る”というよりも拗ねずにはいられなかった。
「僕だって嫉妬位するんだよ…?」
「不二…」
頬を撫でて告げられた言葉に菊丸が目を瞬かせる。
「不二が…ヤキモチ…?」
「うん…。
越前や桃に触れて欲しくない、近付いて欲しくないよ
本当は大石にだって近付いて欲しくないんだけど…
こればっかりは仕方ないからね」
言って笑った不二の顔は少し困った様な、菊丸の大好きな優しい笑顔。
「不二ぃっ」
飛び付いた菊丸を不二の腕が優しく抱き締める。
「ごめんね英二。イヤな想いをさせて…許してくれる?」
「俺もっ俺もごめんっ!」
仲直りのキスは何より甘い味がした。
「チッ………」
「……帰るか、越前…」
「ちーっス」
fin
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