菊丸総受お題シリーズ
□『寄り道』
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「じゃあお先に」
パタンと閉じた部室のドアの向こうでは“はぁ〜”と安堵した皆の溜め息。
足早に学校を後にした不二は、暫く考えた後ゴソゴソと携帯電話を取り出した。
案の定ディスプレイには着信の形跡もメールを受信した形跡もない。
『英二』
という項目を呼び出した所で、不二は少し先に見えた見覚えのあるテニスバックに、発信ボタンを押そうとしていた指を止めた。
近付いてみるとやはりそれは間違いなく菊丸のバックで、お気に入りのクマのキーホルダーがついている。
しかし本人の姿はそこにはなくて、それをヒョイと持ち上げた不二はキョロキョロと周囲を見回した。
「英二…?」
直ぐに見つけた、しゃがみこんだ後ろ姿に、不二が首を傾げる。
「へ…?」
「何してるの?」
具合でも悪いのかと一瞬心配したが、そうではないらしい。
振り向いた菊丸の手元には小さな猫が丸まっていた。
「不二?!にゃんでここに…」
「可愛いね。迷子?」
菊丸の指先が仔猫の喉元をくすぐり、気持ちよさそうに目を細めている。
「朝学校行くとき見つけてさ…」
毛ヅヤも良く、人に馴れていて、洒落た首輪がついている事を思えば飼い猫だろう。
「お前ドコから来たんだ〜?」
菊丸が抱き上げるとそれに答える様に仔猫は小さく“ニャア”と鳴いた。
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