菊丸総受お題シリーズ

□その他
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試合後*仁王



“全国大会が終わるまでデートはナシ”

“会場で会っても必要以上に関わらない”

それが想いを告げあった二人の約束だった。

まぁどうせお互い練習などで忙しい毎日なのだし、大会で会えば敵同士。

毎日の様にやりとりするメールの内容も他愛ないもので、テニスの“テ”の字も出てこなかった(夏休みに入ってテニス漬けの彼らには非常に難しい事だったが…)。

だから相手の状況なんてわからない。

わからないからこそ何気なく視線をやった先に、たった一人でコートに立っている菊丸を見て、流石の仁王も目を見開いた。

無言のまま横目で柳の方を見やると、一体いつ調べてくるのか“菊丸がシングルス戦に出ている経緯”について淡々と話してくれる。

当然とはいえ知らなかった大切な人の憂い。

知っていたからといって何か出来る訳ではないのだが、きっと泣いたであろう彼の側に居れなかった事が歯痒かった。

「…そうか」

柳に一言だけ返すと、青学VS比嘉の試合コートから背を向ける仁王。

しかし大きな歓声に再びコートに視線を戻すと、チームメイトに揉みくちゃにされる笑顔の菊丸が見えた。





「…ふぅ〜っ」

仲間からやっと解放され、冷たい水で顔を洗った菊丸はタオルにポフッと顔をうめる。

仁王は元気だろうか?

テニスで…特に今日初めて公式戦でシングルスデビューした菊丸はそれどころではないハズなのに、
ふとした瞬間過るのは仁王の事。

“そんなヨユーにゃいだろっ”
自分自身にそう言い聞かせる菊丸は、それが“余裕”ではなく“安息”を自らが求めている事には気付いていない。

「…だめだぞ俺っ!」

勢いよく頭を左右に振ってもう一度バシャバシャと顔を洗った菊丸は、持っていたタオルに顔を押し付けた。




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