未来予想図

□悪くない一日(金日)
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「香穂子」

なるべく小さな声で嫁を呼ぶ。

「…香穂子ー…」

静まり返った家の中で、虚しく俺の声だけが響く。

「…さすがに聞こえない…か。」

香穂子はさっき、庭に洗濯物を取り込みに行った。

俺はというと、リビングのソファーの上で固まっている。

原因は…
「…はぁ。よく寝るなぁー。」
膝の上の愛娘。

別にいくらでも寝てくれて構わないんだが、3時間も同じ所を枕にされていると…

(ヤバイなー…)

痺れてきた。

いや、3時間も経つ前にこの娘を布団に移動させればよかったんだろうが、3時間前は俺も寝てたんだ。







「紘人さーん?…あ。」

昼食の片付けを終えて台所からリビングを覗くと、ソファーに座った状態で眠っている紘人さんが映った。

「ぱぱ、ねんねー。」

紘人さんが眠るソファーの下で画用紙やクレヨンを広げてお絵描きをしていた愛娘の香乃(かの)が言う。

「ほんとだねー。」

私は2人に近づいて、香乃の絵を覗き込む。

「ふふっ。パパがおねんねしてる顔?」

「あたりー♪」

画用紙の中には黒いクレヨンで描かれたグルグルの大きな目と丸い輪郭、そして、ソファーを表しているのだろう、黄色い四角形が描かれていた。

「んー…」

ふと、香乃が目を擦る。

「香乃ちゃんも眠い?」

「んー…。」

「?」

香乃はソファーをよじ登り、紘人さんの膝へ寝転ぶ。

「え。」

「かのちゃんもねんねー…。」

「か、香乃…そこで寝ちゃったら、パパが困っ…」

「すー…」

「…寝ちゃった…。ふふっ。」

そして私は毛布を持ってきて、小さいものを香乃に。大きいものを膝で寝ている香乃の顔にかからないように紘人さんにかけた。








「んぁ…」

ふと目を開けると3時。

「うわ。2時間も寝てたのか?」

そう一人呟いて、立ち上がろうとしたら、膝の上に何かあるのに気づいた。

「?…香乃?」

香乃が俺の膝の上で寝ている。

「紘人さん?」

「香穂子」

「コーヒー、入れましょうか?」

「あぁ…。なんで香乃が?」

俺たちの傍で静かに読書をしていたらしい香穂子は、本を閉じ台所へ向かう。

「なんか、自分も寝るって言って。ふふっ、似た者親子ですね♪」

コーヒーを入れながらそう話す香穂子。

「…そうか?似た者…」

「香乃、どっちかというと顔も紘人さんに似てると思いますし。」

「そうか?」
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