私立星奏幼稚園

□私の好きな人(金日+天)
3ページ/3ページ


「ひっく…しょうこちゃ…ごめ…おれっ…」

「ん?かずくんも泣かなくていいんだよー?」

「うっ…ずっ…」

そして日野は左腕に和樹を包んで、優しく背中をさすってやる。

日野の両腕から“ひっくひっく”という音がだんだん薄れ、たちまち静かになる。

(…多分2人共寝たな…。)

そう考えていると、日野がこちらをちらと見た。

(ん?)

「すみません、金澤先生…ちょっと…手伝ってもらえますか?」

日野はできるだけ小さな声で、けれど俺に聞こえる音量でそう言った。






「よし。ありがとうございます、金澤先生。」

日野は俺が近くに来ると、左腕の和樹をそっと俺に預けて、布団に寝かせるように言った。
俺が和樹を布団の上に寝かせている間に日野は右腕にいた笙子を一端、他の園児たちがひいておいてくれた桂一の布団の上に寝かせた。

そして日野は俺に礼を言い、桂一の布団をひいてくれた園児たち一人一人にも礼を言った。

大好きな香穂先生から礼を言われた園児たちは、満足げに微笑んで、昼寝をした。

桂一はというと、俺が抱き上げて自分の布団に移動させ、日野は笙子を移動させ、ちゃんと各自の布団で目覚められるようにした。





そして、今俺たちは職員室へと向かっている。

「けいちゃんはどうして、すぐ寝ちゃうんでしょうね?」

「さぁな。ま、個性的でいいじゃないか。」

「……はぁ。あっ、金澤先生、本当にありがとうございました!すっごく助かりました!」

「あぁ…別に。そうだ。」

「?」

「結局、香穂先生の本命は誰なんだ?」

「…え?」

「みんなが好きで、そのみんなの中で誰が本命だ?」

「!!なっ…」

日野の顔は赤くなっていく。

「知りませんっ!」

そう日野は答えたけれど、俺には分かっていた。

(けど、言わせたいのが男心…ってか?)

「ふーん、そうですか。」

「そうですっ!」


ま、いつか、白状してくれるだろう。



俺はこう見えて結構、しつこいからな。




子供たちを寝かしつけて、金澤先生と職員室に向かう途中…

「結局、香穂先生の本命は誰なんだ?」

と聞かれた。

(あの人、絶対気づいてる!)

これはもう…
白状しろと言われてるとしか思えない。


“私の本命はあなたです。”

と。


(悔しいから絶対言わない!!!)








 END
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ