キリリク

□熱帯夜
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眠れない。暑くて堪らない。じっとりと汗で湿ったシャツが肌に張りつく感覚が不快だった。
なんで今日はこんなに暑いのだろうか。
自分が布団に入ってからすでに一時間近くたっている気がするけど、暑さのせいで一向に訪れない眠気。
ここは本当なら今すぐにクーラーをつけて寝たい。
でももしクーラー病なんかになったら情けなさ過ぎるのでやっぱり止めておこうと思うわけで。

…あぁでも額から汗が伝い耳孔にまで流れてきてさらに不快感が増したよ。
もう本当耐えられない。暑いしベタベタして気持ち悪い。
寝返りをうつ際に剥き出しのふくらはぎにシーツがへばりつく感覚すら不愉快でこのままじゃきっと眠れないなと俺は思った。
事実、さっきから目は冴えていて暗闇の中でも部屋の様子が分かる。
これはもう今寝ることは諦めた方がいいかもしれない。
そう思った俺はベッドから起き上がり机の上に置いてあったボールを持って部屋を後にした。




熱帯夜




外に出ると幾分か風はあってもやっぱり暑くて、ちょっと歩くだけで汗が出てきた。
うん、もういいけど。どうせ汗をかくために出てきたわけだし。
ボールを蹴りながら目的の場所を目指す。
行くのは勿論グラウンド。
まぁ単純に眠れないならサッカーでもしようと思ったわけなんだけど。

しかしどうやら俺と同じことを考えた先客がいたみたいでグラウンドの方からボールを蹴る音が聞こえてきた。
誰、なんだろうか?

グラウンドは照明に照らされていて思いの外明るかった。そして一人ゴールに向かってシュートを放つ人物がいる。


――円堂君だ。


かなり集中しているみたいで俺が来たことにも気付いてないみたい。
いくつものボールがきれいな軌道を描いてゴールへ向かう様は見ていて楽しい。
それに気分転換に出てきた中で偶然にも円堂君がいるなんてツいてる。
いつもなら誰かしら隣にいる彼も今は一人だ。



「練習かい?円堂君」
「……ヒロト?」


さっそく声をかけた。ちょっと練習の邪魔して悪かったかなとは思ったけど見ているだけじゃ勿体ないし。
円堂君の側へ行けばすでに彼は汗だくで額や首筋には汗が流れていた。
結構前からやってたのかもしれないな。
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